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「ごめん」
二人でよく行く地元のカフェ。
こじんまりとした静かな店の窓際の席で、突然謝った俺に潤はきょとんと目を瞬かせた。
「ちゃんと断ったよ。捨てるの忘れてただけ」
続けた言葉に、潤はすぐに意味を悟って苦笑いを浮かべた。
「花音に聞いたの?」
「うん」
「やだなぁ、怒ってたでしょ?」
冷静な反応に、俺も苦笑で返す。
潤はココアを一口飲んで、小さく息を吐き出した。
「私もごめん。佐伯くんに直接聞けばよかったんだけどね。疑うようなことしたくなかったから」
「誤解させた俺が悪いよ」
「ううん。たぶん、これからもこういうことはたくさんあるだろうし、ちゃんと割り切れるようにしたいと思って」
なかなかうまくいかなかったけど、と潤は自嘲的な笑みを漏らす。
彼氏としては否定すべきところなのだろうが、彼女の態度は現実的で否定しようがなかった。
こればかりは俺もどうしようもない。
俺ができるのは、せいぜい彼女にとって誠実な対応をして、押し付けられた連絡先なんかさっさと捨ててしまうことくらいだ。
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