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「浅倉も偉いよな。最初の頃は、イケメンと付き合うなんて嫌だって卑屈になってたくせに、ちゃんと努力してんだから」
「なんでおまえが知ってんの」
「何度か愚痴を聞いたから」
さらりと答えを返されて、ちらりと心に暗い影が差す。
この二人がどうこうなるなんてありえないとはわかっていても、他の男と親しくされるのは嫌だ。
心が狭いとでも何とでも言え。
「まぁ、一番偉いのはおまえだよ。そんだけモテて浅倉を選ぶんだから」
「潤が一番可愛いって言ってんだろハゲ」
「ハゲてねぇよ!おまえ、ミスに告られたのばらすぞ!」
「……ああ、あれ、うちのミスか。どっかで見たことあると思ったら」
好人がテーブル越しに乗り出してきたので、俺は身を引いて眉を寄せる。
先週バイト中に連絡先を渡してきた女だ。
一緒に来ていた二人も見た覚えのある顔だったので、うちの大学の人間だろうとは思っていたが、そういえば学祭のミスコンで見たのだった。
「なんであの女、俺のバイト先とか知ってんの。つか、なんでおまえ告られたとか知ってんの」
「有名だろ、あのカフェに行ったら王子と会えるって。そんで、ミスがふられてきたって」
ふふんと仕返しのように鼻で笑われて、俺はひとつ溜息をつく。
やっぱりバイト先を変えるべきだろうか。
うんざりしながらも、潤のうれしそうにケーキを食べる顔を思い浮かべ、俺は葛藤に頭を悩ませた。
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