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ごはんを食べて、ケーキを食べて、ベンチでのんびりおしゃべりする。
枯葉に変わった桜の木を眺めて、付き合い始めたときは花の盛りだったなぁと感慨に耽る。
最初から、それこそ付き合う前からうまくいかなかったのに。
もう半年以上過ぎた今は、すっかり落ち着いてすれ違いも喧嘩もなくなった。
幸せだと思う。
刺激も何もいらない。
このまま穏やかに、ずっと二人でいたいと思う。
「寒い?」
くしゅん、と小さなくしゃみが隣から聞こえて、俺は脇に置いていたコートを持ち上げる。
「着てな。風邪ひくよ」
「平気平気。佐伯くん着てて」
「俺はいいよ。君、薄着しすぎだから」
自覚があったのか、潤は差し出したコートを大人しく受け取る。
暖かくなると思ったのにと呟いて、彼女には大きなコートを羽織ってポケットに手をつっこんだ。
「佐伯くん、風邪ひいたら看病してあげるからね」
「ほんと?じゃ、ひこうかな」
「じゃ、ってなんですか」
「美味しいお粥を期待してます」
俺の言葉に、潤は練習しなきゃと可笑しそうに笑う。
そう言われると、本当に風邪のひとつやふたつひきたくなってくるな。
なんて馬鹿なことを思いながら、俺は彼女の笑顔に目を細めた。
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