11


くそ、はめられた。

恥ずかしくなってそっぽを向き、背を向けて歩き出す。
おかしそうに笑いながら、佐伯くんが後からついてきた。

「潤」

それでも振り返らずに歩いていると、名前を呼ばれ、ふいに体が傾いた。
そのまま抱き締められて、びっくりして動けなくなる。

「好き」

佐伯くんの腕に力が込められる。

「好き。大好き」

本気でこういうことはやめてほしい。もう暗いとはいえここは公園だ。
腕に触れて力を緩めてもらい、彼のほうへ振り返る。

「私も好き」

ぎゅっと抱きついて、すぐに離れた。
驚いた顔をした佐伯くんは、目が合うと頬を真っ赤に染める。

「反則ですよ浅倉さん……」

仕返しとばかりに、私は笑って歩き出す。
一気に疲れたように、彼は大人しくついてきて、並ぶと同時に自然に手を繋いだ。

「あ、そうだ。もういっこ」

ふと、佐伯くんが思い出したように口を開く。

「なに?」

「冗談でも他の男に好きとか言わないで」

そう言って、彼は拗ねたように口を尖らせる。
一瞬何を言っているのかわからず、それから好人くんとのやりとりを思い出して吹き出した。

私も佐伯くんも、些細なことで不安になるなのは大して変わらないのかもしれない。
これからはもっとちゃんと話をして、できるだけ一緒にいられたらいい。

佐伯くんの向こうで舞い散る桜の花びらを見ながら、私はそんなことを思った。

|
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -