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私が振る?
振られるんじゃなくて?

予想外の言葉に、私はぱちりと目を瞬かせる。
きょとんとする私を見て、佐伯くんは苦笑した。

「もともと、無理やり付き合わせたようなものだから。本当は俺のこと好きじゃないのかなと思って。潤、お人好しだし」

普段と違う含みのない声で、佐伯くんが話し始める。

「気持ちに差があるのはわかってたけど、でも、俺は一緒にいたかったし。離れたくなかったし。断られる理由も、まぁ察しはついたけど。不安になるでしょ、だって」

好きなんだから、と佐伯くんが笑う。

畳みかけるような攻撃に、私は真っ赤になって唇を噛む。
いつもながらストレートすぎる。
反省する場面なのに、照れてる場合じゃない。

「わかってると思うけど、俺は君の中身に惚れたんだよ」

「はい」

「それから、俺は顔でどうのこうの言われるのが一番嫌いだよ」

「はい」

「人を外見で判断するような友達もいらない。何か言うやつがいたら言えよ。ぶっとばしてくるから」

「ハイ」

「なんでもいいから、傍にいて。俺はそれ以外に何も求めてないから」

「……うん」

佐伯くんの言う、ひとつひとつに頷く。
こう思ってくれているとわかってはいたけど、本人の口から聞くとほっとする。

安堵して視線を合わせると、佐伯くんは目を細めてぽんぽんと私の頭を叩いた。

「馬鹿だねー潤ちゃん。君は可愛いよ。とっても可愛い」

「いいですやめてください」

「そうやって照れてる顔とかめちゃくちゃ可愛い。襲いたくなる」

「はっ?」

驚いて立ち上がり、距離を取ってかまえると、佐伯くんはけらけらと笑った。

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