夜の賑わいを見せる繁華街。
嶋田は身形の良い白人と連れ立って歩いていた。
黒いトレンチコートを来た嶋田の腰に、親しげに回される腕。時折交わされる視線には濡れたような情熱が光っていた。

『今夜も君に会えて嬉しかった』

耳元に唇を寄せてまるで愛の囁きをする男に、嶋田は微笑んだ。

『僕も。あなたは優しく愛してくれるから』

男の母国語で答えると、男は満足そうに笑った。

また店の方に連絡する。
そう言って車に乗り込んだ男を見送ると、嶋田は軽く息を吐いた。
先ほどまで男を受け入れていた身体は、腰のあたりに鈍い痛みを訴えている。男の体液を飲み下したせいか、酷く喉が渇いていた。

コンビニがあったはず、と振り返ったはずみに誰かにぶつかってしまった。
舌打ちしそうになるのを堪えて、すみませんと早口で言ってすり抜けようとすると、ぶつかった相手に腕を捕まれた。

「おい」

低く怒気を孕んだ声に顔を上げると、そこに現れた顔に、嶋田は目を見開いた。

「……嶋田、か?」

腕を掴んだ人物にも驚きだったのだろう。
いぶかしげに声を書けてきたのは、矢崎だった。

こんな所で、こんな時に会うなんて。

幸い客とは別れた後だ。
けれど商売をする格好で、していない時の知り合いには会いたくなかった。


「何だよ、その…」

「Excuse me」

矢崎の言葉を遮って短く言うと、捕まれた腕をほどき、身を翻して歩き出す。
追いかけてくる気配を振り切るように人混みに向かっていき、嶋田は夜に身を隠した。


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