「嶋田くん、どういうこと?」

クラスの女子が険悪な雰囲気で呼び出しをかけてきた時に、嶋田は食後の惰眠を貪っていた。
突っ伏していた机から顔を上げると、そのまま廊下に連れ出され、人気のない化学準備室に誘導された。

告白なんて感じじゃねぇよな。
今にも怒鳴り出しそうな女と泣き出しそうな女、他にも何だか面白がっているような興味津々な顔をしている女が何人か。
これだから女は面倒臭い。
泣き出しそうな女の顔で、呼び出された大体の理由は分かったけれど、何が?と嶋田はとぼけた振りをした。

「何が……って、あなたこないだ矢崎くんとキスしてたんでしょ?本当なの?」

やっぱり、と溜め息を吐いて軽く肩をすくめた。

「あー、したかもね」

正確にはされたんだけど。
胸の内で呟くと、事も無げに言った。

「かもねって何よ!やよい見たんだって!矢崎くん、やよいと付き合ってるんだよ?」

とうとう怒鳴った。
生理なのかな、なんて冗談は言えそうにもなかった。怒鳴り女の横で泣いているのは、確かに矢崎の彼女だ。
あいつも言っていた。
言って笑ながら俺にキスをした。


ざわざわと口を揃える女子生徒たちに、もう一度深く溜め息を吐くと、泣いてる女の顔を至近距離で睨み付けた。

「だったらさ、首に縄でもつけといてよ」

驚いたのか、そもそも始めから同情を引くためだったのか、涙は直ぐに止まった。
他の女子も絶句してしまった。
一足早く正気を取り戻した怒鳴り女が、また騒ぎ出しそうだったのを遮り、嶋田はとびきりの笑顔を浮かべて言った。

「あとその彼氏に言っといてよ。どこでも発情すんなってさ」

出入口のそばにあった用具入れのロッカーをすれ違いざまに思い切り蹴りあげると、背後で小さな悲鳴と身を縮める気配がした。


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