しばらくして、いつもの約束の日がきた。
その日もまた午後の授業が休講になった。
俺はアイツの部屋に行った。
自分でも女々しいと思う。
直接聞けもしないのに、こっそり確かめに来るなんて。
またあの子がいるかも。
でも何もないかもしれない。
あれは火遊びみたいなもんだ。
でも俺がいるのに?
付き合ってるのに?
特定の誰かと浮気を繰り返す?
ドアを開けなければ確かめられない。
確かめてどうする。
知って何になる。
それでも――。
緊張していた。
嫌な汗をかいていた。
鍵を持つ手が震える。
俺は静かに、鍵を開けた。
靴を、見つけた。
部屋の奥からの、声を聞いた。
あの時と同じ。
けれどもう本当だ。
疑いようもない。
真っ黒。
部屋から出た俺は、心臓の速さに現実を知った。
ショックだった。
思ってた以上にアイツのことを好きになっていた。
でもその腕の中には別の誰かがいる。
俺にキスした唇で、同じ唇であの子にキスをして。
俺を抱いた腕で、同じ腕であの子を抱きしめて。
セックスしたんだ、あの部屋で、あのベッドで。
あの部屋の同じコンドームで同じジェルで同じティッシュで同じボディソープで。
自分の部屋に帰る途中に、アイツにメールを打った。
今日は行けない、しばらく課題で忙しくなるから会えない。
はっきり別れを告げられるほど、アイツの存在は小さくなくなっていた。
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