目の前には、ばっちりメイクをした女子大生。
ふわふわ揺れる髪先。
甘ったるい香水の香り。
雑誌に載ってもおかしくないような、笑顔の彼女たち。
――なんで俺はここにいるんだろうか。
思わずそう考えてしまうほど、自分が場違いな気がする。
出井に頼まれてアイツを合コンに誘った。
断るとばかり思っていたのに、アイツは意外にも了承した。
ただし、俺が行くなら行く。
そんな馬鹿臭い条件をつけて。
出井の前で、俺に拒否権はなかった。
媚びて、おだてて。
すぐ近くでみんな賑やかにしている。
俺は溶け込む気もなくて。
ぼんやり片隅で煙草を吸っていると、ベリーショートの女の子が隣に来た。
確か、マイさんだったはず。
自己紹介もろくに聞いてなかったことを少しだけ後悔した。
「ね、ライター貸してくれない?」
どうぞ、と渡すと、彼女は真っ赤なマニキュアの指で火をつけた。
セブンスター。
女の子にしてはいかつい煙草を吸っているんだな。
「何か静かじゃない?」
「あー、俺は人数合わせみたいなもんだし」
合コンとか苦手、苦笑すると彼女も同意して笑った。
「今日いきなり来てって言われてさぁ。……ていうか、みんなギラギラし過ぎだよね」
がっつき過ぎ、そう眉をしかめる彼女の目は、とても冷静だった。
この子は彼女たちと何か違うんだろうか。
「マイさんは良いの?春日戦線」
茶化すように言った。
女の子たちは笑っている。
でも端から見ると、商品の春日を賭けてレースをしてるみたいだ。
「あたし、ああいうイケメンって無理なの。どっちかって言うと――」
彼女は俺に視線を合わせて、にっこり笑った。
「山下くんみたいな、普通男子の方が良いな」
「……それって、俺、けなされてんのかな」
そんなことないよ?
上目遣いで首を傾げるマイさんは、悪戯っぽくウインクをした。
なんだかこんな風に女の子と触れ合うのも久しぶりな気がする。
意識したことはなかったけれど、アイツと付き合っていた時は。
授業や課題以外の時間はほとんど、アイツが占めていた。
そんなことに今更気づく。
アイツを見る。
アイツは、俺を見ていた。
女の子に囲まれて。
その女の子に出井たちが群がって。
賑やかな輪の中心で、話に花を咲かせながら、それでも俺を見ていた。
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