もうどうでも良いんだけど。
どうでも良い、なんて思うのは。
アイツのことで揺れるのが嫌だから、無意識に感情を殺しているんだろうか。
だとしたら、俺ってかなりダサくないか。
ため息を煙りと一緒に吐き出す。
携帯をいじっていた出井が、ニヤニヤしながら側に来た。
「春日ってさー、相変わらずイケメンだよな」
そう、アイツはイケメンだ。
この大学でイケメンと言えば春日、ってくらい。
その面で、学内でアイツを知らない人はいないんじゃないだろうか。
今更何を言ってんだ。
そう訝しむと、出井は両手を顔の前で合わせて拝むような格好を取った。
「なー、春日のこと合コンに誘ってくんない?」
「俺が?ヤだよ」
「でもお前、春日と仲良いじゃんー、頼むよ」
ミスコン女子とセッティング出来そうなんだよー。
イラッとするくらいの笑顔で、土下座でもしそうな勢いで言う。
「……自分で誘えば」
仲、良かったんだよ。
付き合って別れて、もう今は友達以下なんだけど。
付き合ってたことは誰にも言っていないから、そんなことを言えるわけもない。
「ムリムリ!餌になってくださいなんて言えるわけないじゃん!」
餌、ね。
アイツの名前を出せば、さぞかしたくさんの女子が吊れるだろう。
「俺も言えるわけないじゃん」
そんな面倒臭いこと、というかアイツに関わることはしたくない。
大体元カレに新しい出会いを勧めるって。
なんか、すげぇしょっぱい。
「山下なら出来る!お願い!」
でも出井は一歩も引かない。
こいつはこういう奴だ。
女の子大好きで、出会いのためには何でもする。
どうせ相手にはもう、アイツは来るとでも言っているんだろう。
「……誘うだけな」
後は知らない。
そう言ったら出井は嬉しそうに抱き着いてきた。
「おー心の友よ!」
「うっぜぇ、死ねチャラ男」
こんなことを言ってもこいつはへこたれない。
抱き着いたままの出井の腕を解きながら、気がすすまないアイツへの連絡を考えて、何度目かのため息をついた。
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