朝焼けの想い人へ

「ひえ、炭治郎ってば早いね」

「おはよう名前!名前だって早いじゃないか」

「私一番だと思ってたのに〜」

「あはは、善逸たちはまだ寝てるぞ」

まだ陽が昇りだしたばかりで薄暗さの残る朝、私たちは藤の花の家紋を掲げているお屋敷にお世話になっていた。
私、炭治郎、善逸、それから伊之助は同じ最終選別を生き抜いた所謂同期というやつで、同じ任務に当たっていた。無事にその任務を終え、療養にこのお屋敷にたどり着いた。

「怪我まだ良くなってないのに、安静にしておかなきゃだめだよ」

「そうなんだけど、鈍っちゃうような気がしたんだ。だから少しだけ動いておこうと思って」

「もう、言いつけちゃうよ」

「あはは、それは困ったな」

私はお庭で素振りをする炭治郎を少し咎めたけれど炭治郎はこういう時に無茶をするような人じゃないことを知っている。
私は縁側に腰掛け何をするでもなく炭治郎を眺めた。炭治郎は私を一瞥した後また真っ直ぐ前を見て素振りを始めた。
まだ少しだけ冷たい空気が肺に満ちて心地がいい。私は女の子だから、と三人と部屋を別にされたため少し寂しくなって三人の様子を覗きに行こうかなと思っていたのに、部屋にたどり着くより先に炭治郎に会った。
せっかくの休息も手を抜いたりしない炭治郎はかっこいい。流石お兄ちゃんだ。
とっても頼りになるし、騒がしい善逸も伊之助も上手にまとめていて私たちの秩序はきっと炭治郎が作り出してるんだと思う。
水の呼吸を使う剣士の炭治郎。義勇さんと同じ、水の呼吸。

「…どうしたんだ?」

「え?」

「いや、なんだか寂しい匂いがしたんだ」

「ああ、義勇さん、元気かなあって」

「名前は冨岡さんが本当に好きなんだな」

炭治郎が笑った。そう、私は義勇さんが大好き。
もうしばらく会ってない。私も任務があるし、義勇さんは柱だからもっと忙しい。そんなこと考えてたらとっても寂しくなってきた。

「大丈夫、冨岡さんはすごく強いからきっと元気にしてるよ」

「まあそうなんだけどさあ〜ずーっと会ってないから、気になっちゃうよ」

「じゃあ冨岡さんの元気なところを確認するためにも名前も元気で居ないとな」

素振りを終えて私の隣に炭治郎が座るとぽんぽんと頭を撫でられた。
炭治郎はめちゃくちゃ優しい。つい甘えたくなってしまうし甘えさせてくれるせいで甘えてしまいがち。
勿論今日とてその優しさに我慢ならずに炭治郎にずるずるともたれかかった。

「帰ったら義勇さん、会えるかな〜」

「会えるといいな、俺も挨拶がしたいし。」

「義勇さんが任務から戻ってますように〜!」

「入れ違いにならないように、早く良くなって戻ろう」

「うん!」

丁度朝陽も昇りきりお日様の暖かさを感じだした。
きっとそろそろ朝ご飯だ。善逸達はまだきっと寝てるから起こしてあげなきゃならない。
私も炭治郎も立ち上がって静かなお屋敷をまた歩いた。
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