蕾が花開く運命であれ

「義勇さん!!!」

冨岡義勇は背後から聞こえたその声に少しだけ眉を動かした。
暖かい昼下がり、場所は産屋敷邸、大きな任務から帰ったことを報告に来た冨岡は丁度用を済ませたばかりだった。

「お久しぶりです!!お元気でしたか!」

冨岡は声の方へ体を寄越すと勢いよく声の主が飛びついてきた。
冨岡にはここまでのことは全て想定される範囲内の事象であり驚くことすらなかった。

「…名前も変わりないようだな」

「はい!!勿論です!!」

「ならいい」

飛びついてきた名前を簡単に受け止めて冨岡は言った。
名前はにこにこと冨岡に笑いかけ存在を確かめるように強く抱きしめるばかりだった。

「ふふふ、よかったわね名前ちゃん。冨岡さんに会えて!」

「はい先生!ありがとうございます!」

冨岡が新たな声へと視線を向けるとそこには名前の師範にあたる甘露寺が立っていた。
名前は冨岡にしがみついていた腕を解いてぴったりと冨岡にくっつき甘露寺に向き直った。
冨岡の羽織りを皺がつくかどうかもお構いなしに強く握って。

「名前ちゃんたら、お帰りなさいがまだよ?冨岡さん、お帰りなさい」

「あ、本当だ!お帰りなさい義勇さん!」

「ああ、戻った。」

「とっても大変な任務だったんですよね、お怪我はないんですか?」

「大事ない」

「よかった!」

「うふふ、ずっと気にしていたものね、名前ちゃん」

「そうなんですよ!毎日とっても気にしてました」

名前は冨岡を見上げて少し眉を釣り上げ言った。冨岡はただそれを見るだけ。その反応に名前は何故か満足そうに笑いまた冨岡の体に腕を巻き付けた。

「義勇さんが居ない間も私すごく頑張ってたんですよ!ね、先生!」

「そうね、名前ちゃんはとっても強い子だわ!」

「そうか」

名前は頭をぐりぐりと冨岡に押し付けてじゃれつく。
甘露寺は頬を染めてにこにこと笑い返すと冨岡もわかるか、わからないか程の笑みを溢した。

「義勇さん、褒めてください!」

名前は勢いよく顔を上げると冨岡にねだる。
あらあらと甘露寺が笑い、冨岡は驚くことも呆れることもなく、ただ一つ「ん、」と簡素に相槌を打ち名前の頭を撫でつけた。

名前は嬉しそうに笑い肩を竦めいつものように冨岡に言った。

「義勇さん大好きです!」

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