「えっぎ、義勇さん髪の毛どうしちゃったの」
「切られた」
「鬼に?」
「ああ」
「ひ、ひええ…」

絶句した。嘘でしょ。非番らしい義勇さんを訪ねたらいつも無造作にまとめられてる髪の毛が綺麗さっぱりなくなってた。女の私としては髪を切るということはそれなりに覚悟のいることで、切ったあとは周りの目が気になったりするのだけど義勇さんは勿論そんな様子はない。
どうやら戦いの最中、ざっくり切り落ちてしまった後ろ髪を怪我の手当てついでに蝶屋敷で整えてもらったらしい。なるほど、随分綺麗に切られたものだと思ったけれどそういうことなのか。

「随分さっぱりしちゃって…」
「…軽すぎて落ち着かない」

ずっと髪の長かった義勇さんは余儀なく短く切り揃えられた後ろ髪に違和感があるのか、いつも陽に晒されていなかった首筋を撫で付けた。
その仕草のなんと色っぽいことか。
私は義勇さんの首筋を、うなじを、初めて見たかもしれない。
ものすごく目に毒だ。別に脱いでるわけでもないのに。綺麗に着こなされた着流しから見えるこの毒。なんだか悪いものを見ているような気がしてきた。

「…でも、似合ってますよ」
「…そうか」
「義勇さんだからなんでもかっこよく見えちゃう」

この人すごく顔がいいからなあ。
大抵のものは似合ってしまうんだと思うけど、こんな予定はなかったからとてつもないギャップに私の心はもうヘロヘロになってしまっている。
なんだこの人、めちゃくちゃずるいな。
髪の毛を切っても少しの違いじゃ簡単には気づいてくれやしないのに、私はどうしてこんなに翻弄されなきゃならないのか。
ほんとずるすぎないかな。

「…お前がそういうなら、いい」

私の頭をいきなり撫で付けて笑って、そのままするする私の頬を撫でる。目元を優しく義勇さんの親指が撫でると私の髪の毛に指を通して私の横髪を退けた。

やだ、この人。
何をしたって私の負け。

やだこの人
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