「ねえリモコンどこやったの?」
「…知らない」

あと10分ほどで楽しみにしていたドラマが始まるから一秒たりとも見逃さないようにチャンネルを合わせておこうと思って周りを見渡してもリモコンがない。
私も義勇も各々にやらねばならないこと、やりたいことをしておりBGM程度にテレビを点けていた。

「ええ、ちょっと探してよ。もうちょっとしたらドラマ始まっちゃう!」
「どうせ使って放り投げたんだろう。もう少し周りを探したらどうだ。」
「え?最後に使ったの義勇でしょ!義勇も探してよ!」
「俺じゃないお前だ」
「私じゃない!絶対!」

リモコンをいつも固定の位置におかない私たちはだいたいいつもこのあたりにある、というざっくりした管理をしているせいでリモコンが見つからないことはしばしばある。大抵はその場はまあいいかと諦めて忘れた頃に見つかるのだけれどもそうも言ってはいられずあと数分に迫ったドラマの時間に焦りを感じで身の回りにあるクッションやブランケット、ぬいぐるみだったりをひっくり返して探した。
義勇は適当に身の回りをきょろきょろと見回すだけで探す素振りさえ雑すぎる。

「もー!ちゃんと!探して!今日!!最終回なの!!」
「っ、物を投げるな。危ないだろう。」
「義勇!!さ!が!し!て!」
「どのみち録画してるなら急ぐ必要なんかないだろ。」
「そういう話してないの!見たいの!私は!」
「まったくお前は、」

ひっくり返したクッションを義勇に投げて私は駄々をこねた。
義勇はクッションを軽く受け止めてお母さんみたいな小言をもらしたが仕方ないとばかりに立ち上がって探しだしてくれた。
私が座っていた場所周辺にはどうにも見当たらない。おかしい。こんなに探してるのに。

「どうしようどうしようはじまっちゃう!ねえ!ねえ!」
「知らない。」
「なんでそういうこというの!私は本気なの!」
「騒いでないで探したらどうだ」
「もー!!義勇ー!!」
「痛い叩くな」

これはだめだ。絶対間に合わない。無理。あと二分しかないもん。
既に悲しみに暮れてしまった。楽しみにしていたのに。リアルタイムで見れると思ってたのになんで見つからないの。
怒りと悲しみとが同時にきてむしゃくしゃして義勇の背中をぽかすか叩いてもすっきりしない。ああ、私は今日のために働いてきたというのに。

「あーーーあもうだめ始まっちゃう…悲しい…やだ…」
「世界が終わるわけでもないだろ」
「世界の終わりみたいなもんだよ!うえーん!!」
「子供か」
「子供でいいもん!!義勇ーーー!!」
「帰りに買った菓子でもつまんで録画を待て」
「うう…あーあ…始まっちゃった…悔しい…なんで…」
「子供か」
「子供です!!!」

義勇の背中にしがみついてぐりぐり頭を押し付けありったけの駄々をこねた。
義勇は腰に回った私の手に手を添えてぽんぽんと叩くとずるずると私を引きずって冷蔵庫の前まで歩いた。
今日お昼に買い物に出たときに明日は休みだしと買ったモンブランが入ってる。本当はドラマのあと余韻に浸りながら食べるつもりだったのに。
義勇は私を巻き付けたまま、フォークやお皿、カップを取り出しているようでカチャカチャと食器の音と戸棚が開いたり閉じたりする音がした。
義勇、優しい。大好き。

「……………」
「…?……義勇?」
「……いや……あったぞ」
「え?」
「リモコン」
「は?」

義勇が冷蔵庫を開けてそのまま動きを止め冷蔵庫を閉める気配もないので不審に思って声をかけたら義勇が私の腕を撫でて義勇の優しさのせいで忘れそうになってたリモコンがあったと言う。
どこに?なんで?と義勇の背中越しに義勇の方を覗きこむとモンブランの入った箱のすぐ隣、あんなに探していたリモコンが鎮座していた。
いや、え?どうして?

「……どうする、今から見るか」
「……いや、いいや……なんか……いや、なんで?ここに?」
「知らない」
「だよね私も」
「…見つかってよかったな」
「そ…だね…?…まあいいやもう、モンブラン食べよう義勇」
「あんなに駄々をこねてたくせに」
「義勇といちゃつきながら録画終わるの待つことにした」
「現金なやつめ」

とりあえずモンブランとリモコンを冷蔵庫からだして義勇はモンブランを食べる用意を進めた。
私は義勇にくっついたままそれを眺めた。

「は〜やく〜」
「子供か」
「子供です」

「子供か」「子供です」
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