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Novel
ある雨の日。主人がどうしても行きたいというので、初めてみんなで図書館というものに入った。
いつもは、本読んだり勉強することなどに無縁な主人だ。それが、いきなり図書館に行きたいと言い出したのだ。僕らは少し、いやかなりか、驚いたかもしれない。
どうして行きたいのかと仲間が問うと、主人は読みたい本がある、と答えた。
最初は一人で行こうとしていたが、皆が図書館に行きたいというので、みんなで行くことにした。

行く途中であの二人はいつものように喧嘩をしていたが、喧嘩するほど仲がいいという言葉があるものなので、僕たちは傍観に徹していた。
中にはたくさんの本があり、正直にいうと、僕はあまりの本の多さに感嘆の声を上げそうになった。
しばらくは、個人行動としてそこら辺をブラブラと歩いていたが、主人の背中が見えたので、後を追いかけようとした。それは、何しているのだろうかという疑問と驚かしてやろうという思いが浮かんだためだ。
しばらくすると、主人はある本棚で止まった。そこは、いわゆる絵本がある場所だった。
主人の年齢からしたら不釣り合いではあるし、彼女の精神が少し幼いといってもあまり行くような場所ではない。疑問は増すばかりだ。
僕はそっと近づき、主人の肩を叩く。やはり僕の存在に気がつかなかったのだろう、主人の肩が少しビクッとはねる。それを見てなんだか可愛いと思う気持ちに戸惑いを感じながら、何を見ているの、と僕は主人に尋ねてみた。
僕の方を見た主人の目は明らかに不機嫌そうだったが、そこはあえてわからないふりをする。やがて不機嫌さを目だけで表すことを諦めた主人は、僕に向けていた視線を少し落とす。そして、いつの間にか手にしていた絵本を僕のほうへと差し出した。
表紙には、なんだかよくわからない生き物と少女が描かれており、少女のほうは魔法のステッキみたいな棒を持っていた。
いわゆる、冒険ファンタジーものなのだろう。主人の好みそうなものだ。

「この本、昔お兄ちゃんが読んでいたんだけど、ポーは覚えてる?」

いきなりそんなことを聞かれて、僕はへ、と間抜けな声しか出てこなかった。
確かに、その絵本の表紙には見覚えがある。しかし、かなり昔のことのように感じてか、その当時のことが思い出せない。
しばらくしてもなかなか思い出すことができなかったが、ふと思いだしたような気がした。
あの絵本は、主人が小さいころ大好きだった絵本で、彼女の今後にかなり影響を与えたものでもある。いつかこの絵本の主人公のように冒険に出てみたいと、昔はいつも言っていたような気がする。
主人が勉強嫌いのためか僕は字があまり読めないが、あの絵本は字が読めなくても話がわかる。それは、さっき主人が言っていたように、彼女の兄君が毎日のように読んでいたためだ。主人の兄君が、常に何か甘やかしていたことも思い出し、知らず知らずのうちに笑いそうになる。
と、そこでここは図書館だったと思いだし、確か図書館は静かにしないといけないということも思い出す。まあ少しくらいなら大丈夫だと思っていたが、静かなところほど小さな物音でも響くものだ。
少し静かにしようかと思案していたが、主人がいきなり笑顔で僕に問う。

「これから一緒に、この絵本でも読まない?」

可愛らしく小首をかしげる彼女を見て、どうも邪険に扱うことができない。
今は、主人と少しでも長く二人っきりになりたいと思う気持ちに気付かないように、僕は彼女の誘いにのることにした。

昔の出来事今のこと




なんか相変わらずのグダグダで長くなりました……。
本当はかなり違ったのですが、どうもシリアス一直線になるしもっと長くなりそうだったのでほのぼの目指しました。
なりきれてませんがね。

20111002




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