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Novel
外に出ると、風が気持ちいい。満天の星も見えて、ひと時を過ごすのにちょうど良さそうだ。
そう思い、エリスは近くの木の根本に腰を下ろす。美しい星を見ながら、彼女はポケットからタバコとライターを取り出した。

普段仲間がいる前では、タバコは体に悪いと言われて吸うことが出来なかった。エリスの身を案じていることはわかるのだが、ヘビースモーカーである彼女にはなかなか辛かった。
何度か、少しでもいいから吸わせてくれと頼んだこともある。しかしその願いは、彼女のマスターであるサユリにことごとくはねつけられた。
そのため、エリスは仲間が寝たあとによくこっそり抜け出す。そして、一人でしばし時を過ごしながら一服するのだ。
周りに人がいないならばれないよね、と彼女は思っているが、仲間からすればそれは考え方がずれていると言われるだろう。

変わらない風の心地よさと星空は、心無しか気持ちが穏やかになっていく。今日は新月であり、雲も見当たらない。さらに、周りには星明かりを邪魔する照明が無い。まさに、星を見るにはちょうど良い機会。少しの間、星でも見て暇つぶしをしようかとエリスは考えた。
しかし、その願いは誰かが近づいてくる音によって消えた。こんな時間に珍しい。訝しく思いながら、音のする方へ顔を向けた。
そこには、薄ぼんやりとだが人影が見えた。その人影は、こちらに気付いているのかどんどん大きくなっていく。
一瞬、何者かが襲ってくるのかと身構えたが、様子からして違うためにすぐ警戒を解いた。
だんだん近づいてくるにつれ、その人物が誰なのかわかってきた。エリスはまさか、と思ったが、着ている服、纏う雰囲気、持っている小物まで見えてしまっては間違うことは出来なかった。
エリスに近付いてくる人物。それは、普段こんな遅い時間には起きているはずがない少女、フランだった。

「エリス、こんなところでどうしたんですかー」

その特徴的な喋り方をする少女を前に、エリスはしばらく返事が出来ずにいた。

「あ、フランか……」

なんとか発した言葉は、そこにいる人物への確認みたいなものになった。本当は聞きたいことがあったのだが、なぜだか言うことができなかった。それは、本来なら禁止されているはずの喫煙を、皆に隠れて吸っているところを見られたからによる焦りがあったからなのだろう。
しかし、フランは何も気にしていないのか、柔らかい笑みをうかべながらエリスの近くに腰を下ろした。そして、今日は星が綺麗に見えますねー、と言う。
エリスは、フランが何を考えているのかわからず、適当にそうだな、と返す。しかし、その様子を見ながらフランはクスリと笑った。

「大丈夫ですよー、エリス。このことは言いません」

そう言い、フランはエリスが持っているタバコを指さす。しかし、エリスは言われた意味をすぐには理解できなかった。
しばらくして理解すると、今度は驚きによって何も言えなかった。
長めの沈黙のあと、エリスはありがとうと呟いた。それに、フランは笑みを深くするだけで答える。
そのことで安心したのか、エリスは、先程からあった疑問を未だ微笑むフランに言った。

「こんな遅くに珍しいな。今日はいったいどうしたんだ?」

フランはその問いに、一瞬驚いたような顔をした。しかし、すぐに先程と同じ表情をすると、よく眠れなかったんです、と言う。

「眠れないから、夜の散歩をしてみようと思ったんですー。星も綺麗だったんで、外に出たいな、とー」

そして散歩してたら、エリスがいたので近づいてみたんですー、と話すフランを見て、エリスはなるほど、と呟いた。
残り少なかったタバコがなくなると、フランはそろそろ戻りましょうか、と尋ねる。エリスはそれに同意すると、二人は立ち上がって皆がいる場所へと歩いていった。
そして、戻るまでの間は二人の会話は途切れることはなかった。

星空の下



心金の日常的なものを書こうと思ったら、こんな感じのものになりました。
そして、なんか無駄に長い気がします……。

20110701




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