世界は残酷なんだから



アニの視線が私へと移る。
「ねぇ、なまえなんでここにいるの?あの日、私はあんたを地上へと落としたはずだよね。なまえは何者なの?…やっぱり未来が見えてるんだよね」
「…未来なんて見えないよ!!もう何も分からない!アニ…お願いだからこっちに行こうよ。104期の仲間じゃん!」
私は叫ぶ、アニに届くように…。
「…仲間か。そう思ってるのはなまえだけなんじゃないの?少なくとも私は…仲間とは思ったことないけど…」
アニの言葉に私は息が詰まりそうなる。
私は唇を噛み締めて何も言えなくなった。

そしてアニはアルミンへと視線を移す。
「アルミン…私があんたの…良い人で良かったね。ひとまずあんたは賭けに勝った…。…でも私が賭けたのはここからだから」
アニの言葉にアルミンは"ハッ"として煙弾を撃った。

"パンッ"と乾いた音が響けば待機していた人達がアニの元へ何人も群がりアニを捕える。
自傷行為で女型の巨人にならないために口もタオルで縛る。
アニが捕えられる姿を4人で見つめた。

するとアニが指輪から何かを出すのが見えた。
それに気が付いたミカサと私はミカサはエレンを、私はアルミンを掴んで地下の階段を降りる。
「ミカサ!?」
「なまえ!?」
エレンとアルミンが声を揃えて名前を呼んだ。
「一歩…遅かった!!」
ミカサの言葉にエレンとアルミンが驚いた顔をした。

まるで雷が落ちるような衝撃がまたした。
それは巨人が現れたときに現れるあの光。
その爆風で何人もの人が飛んだ。

「3人とも怪我は!?立てるなら走って!」
ミカサの声で急いで地下の奥へと向かう。
チラリと入口へと視線を移せば、吹き飛んだであろう血だらけの仲間が見えた。

巨人となったアニの手がエレンを探すためにこちらへと向かってくる。
私達は奥へと急いで走った。
「舌を噛んでいたの?一体…どうやって傷をつけたんだ!?」
アルミンの問いかけに私が答えた。
「指輪に刃物が仕込まれていたのが見えた…。多分アニはそれで指を切ったんだと思う」
「そんな…単純なことに…。やっぱり、僕の嘘は最初から気付かれていたんだ…。地下深くで待ち伏せしてるのもバレバレだった!…もっとやり方が他にあったはずだ…」
アルミンが悔しそうに呟く。
「反省は後にして!…教えて、私達はどうすればいい?」
ミカサの問いかけにアルミンが答える。
「これから…とりあえず、3班と合流して地上に出て後は二次作戦通りに…アニと….女型の巨人と戦う!エレンは….予定通り巨人になって捕獲に協力してもらう…いいよね?」
「あぁ!」
アルミンの言葉にエレンが頷いた。

「おーい!」
遠くから声がした。
「3班だ!」
「何だ!?一次捕獲は失敗したのか!?」
アルミンが答える。
「失敗しました!二次の作戦に移行して下さい!」

"ドーン"
大きな音がしたかと思えば女型の巨人の足が急に目の前に現れ、3班のメンバーが潰された。

「えっ…」
私は目を見開いてその場を見つめた。
「踏み抜いた…」

女型の巨人に踏み潰された3班のメンバーにエレンは近寄ろうとする。
「助けないと…」
「エレン!下がって!」
ミカサがエレンの肩を掴み止めれば、アルミンへと視線を向ける。
「あいつは…エレンが死んでもいいっていうの!?」
「…賭けたんだ。エレンが死なないことに賭けて穴を空けた。めちゃくちゃだけどこうなったら手強い…。アニは死に物狂いでエレンを奪うつもりだ」
女型の巨人が空けた穴からこちらを見る女型の巨人が目に入り、私は少し身震いをする。

私達は穴から離れるように地下通路を走る。
「どうしよう…退路を塞がれた…。あの穴や入り口から立体機動で素早く出たとしても…その瞬間を狙われる…。かといって…ずっとここにいてもいつ踏み潰されたっておかしくない」
「俺が…何とかする!あの時、大砲を防いだみてぇに…」
エレンの言葉に立ち止まる。
「こっちに来い!」
「ちょっ…」
「行くぞ!」
エレンは私達を引き寄せて、手を噛み自傷行為をする。
その行為に私達は目を閉じた。


…………。
しばらく経ったが何も変化は起きない。
「…え?またかよ…。そんな、こんな時に!?クソぉぉいってぇぇぇー!!」
エレンはその場に跪いた。

「目的がしっかりないと巨人になれないんだったよね…」
私はエレンを見て呟く。
「もう一度…イメージしよう強く!」
アルミンが言う。
「やってる!けど…何でだ!」
「本当に?」
エレンの横にミカサがしゃがみ込む。

「まだアニと戦うことを…躊躇してるんじゃないの?…まさかこの期に及んで、アニが女型の巨人なのは気のせいかもしれないなんて思ってるの?あなたはさっき目の前で何を見たの?…あなたの班員を殺したのはあの女でしょ?まだ違うと思うの?」
ミカサがエレンを覗き込んで言った。
「う…うるせぇな…俺はやってるだろ!!」

「分かってるんでしょ?女型の巨人がアニだってこと…。じゃあ戦わなくちゃダメでしょ?」
ミカサの言葉に私は黙っていた。

どうしたらいいのだろうか…。
私が考えていればアルミンが言った。
「作戦を考えた!僕とミカサとなまえがあの穴と元の入り口から同時に出る。そうすればアニはどちらかに対応する。その隙にエレンはアニがいない方から逃げて!生身で戦闘に加わってはダメだ。女型の巨人は兵士で何とかするから…。いくよ!」
アルミンの言葉に私は頷く。
「は?待てよ、アルミン!それじゃお前らの誰かが死んじまうだろうが!」
「そこにいたって4人共死ぬよ!ミカサ、位置について!なまえは僕と一緒に来て…」

「わかった!」
「うん!」
私とミカサが答えた。
「ミカサ!なまえ!」
エレンが叫んだ。

アルミンと私は入り口の方へ移動し、ミカサは穴の方へ移動した。

「な…何でお前らは戦えるんだよ!」
「仕方ないでしょ?…世界は残酷なんだから」
エレンの叫びにミカサに静かに答えた。

その言葉を聞きながら私はアルミンの元へと行く。
お互い配置につけばアルミンとミカサと私は同時に手を挙げて合図を出した。

その時、あの雷が落ちるような衝撃が襲った。
……そう、エレンが巨人になったのだ。


エレンが女型の巨人を殴り飛ばすのが見えた。
「エレン…巨人になれたんだ」
私の呟きは風のように消えた。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -