仲間絆



部屋に残った私達はしばらく黙ったままだった。


「…あの日さ、なまえは女型の巨人に殺されたって思ってた。でも兵長は"死んでない"って言ったんだ。…俺らにも分かるように説明してほしい」
エレンが真っ直ぐ私を見て言った。
ミカサとアルミンも私を見ている。

リヴァイさんは"死んでない"って話したんだ。
私自身のことを3人に話してもいいのだろうか…でももう話したって今後の未来は分からない。
それでもこの3人には話さなきゃいけないのかもしれない。……私自身のことを。

私は真っ直ぐ3人を見て話し出した。
「…もしかしたら、気が付いてるかもしれないけど、私はこの世界の人間じゃないの」
私の言葉に3人は目を見開く。
「…気が付いたらこの世界にいた。私の知ってる…この世界に」

「知ってる…?どういうこと?」
アルミンが言った。
「…この世界はね、私の住んでるところでは漫画…って言っても分からないよね、本みたいにストーリーになってるの。だからエレンやミカサ、アルミンのことも104期のメンバーのことも知ってた。もちろん、リヴァイさんやハンジさんのこと知ってるし…エレンが巨人になることも知ってたよ」
「…は?俺が巨人になること分かってたのか?」
エレンが驚いたように言うと私は小さく頷いた。

「…全部知ってた。全部知ってて、みんなの前にいたの。超大型巨人が現れるのも……マルコが死んじゃうことも知ってた」
私の声が震えた。

「…なんで早く言わなかったんだよ。どうして今まで黙ってたんだよ!」
エレンが急に大きな声で言った。
「言える訳ないじゃん!!」
私もエレンに負けないくらい大きな声が出た。

「…エレンには分からないかもしれないけど、もし私が話して展開が変わったらどうするの?…あの場で死んでたのはマルコじゃない他の誰かになってたかもしれない…。それでも…それでも私はマルコを守りたかった…助けられたかもしれない。でもあの日マルコが私に言ったの…。"俺は大丈夫だから、エレン達の所へ行け"って…。私は1人でも助けたかったから調査兵団に入った。誰かの命を救えるならって思って……」
抑えていた涙が溢れ出した。
もう矛盾してるし、説明がめちゃくちゃだ。
ストーリーを変えてしまう恐怖とそれでも誰かを助けたいっていう想い。
「でも…もう分からないの。私が知ってるのは…女型の巨人が現れるとこまで。だから、まさかペトラさん達が死ぬことになんて知らなかった。…あの日、女型の巨人にワイヤー掴まれて目が合って私が地面に落とされた時、私1回自分の住んでた世界に戻ったの。…その後の展開を調べてると頭痛がしたりして邪魔された。でも…私はみんなの所へ戻りたいって思った。…今、戻ってこれたけど…私は今後の未来は分からない。みんなの傍にいても役に立たないかもしれないけど……今まで通り仲良くしてくれる…かな?」

「はぁ…」
急にエレンがため息をついたと思えば、立ち上がり私の隣に座り頭に手を置かれた。
「お前は、バカか!そんななまえがどこの世界から来ようとずっと仲間に決まってるだろ!今までずっと一緒に訓練してきたんだからさ。…まぁ黙ってたことはちょっと怒ってるけど」
エレンの言葉に頬が緩んだ。
「なまえは大切な仲間。未来が分かるなんて気にしなくていい。…私達の傍にいてくれればいいんだから」
ミカサの言葉に泣きそうになる。
「…仲間を守るってのはいいことだけど自分自身もっと大切にして!僕達はなまえの傍にいるんだからさ!」
最後に言ったアルミンの言葉が胸に滲みる。

「…ありがとう」
私は泣き顔でそれでも笑顔を作った。


「…まずは明後日の作戦に向けて行動しなきゃ。アニは多分…私がこの世界の人間じゃないことに気が付いてると思う」
「…なんでだよ」
エレンの言葉に続けて言う。
「私が調査兵団になる前の日にアニに声を掛けられたの。その時に"未来が見えるの?"って聞かれた。私は何も答えなかったら"なんでもない"って言われちゃったんだけど、アニは多分気が付いてると思う。…アニの中では私はあの時死んじゃってるから多分明後日、アニに会ったら驚くかもしれないね」
「…そうか、アニはあの時になまえを殺したって思ってるんだよね…。でもその方が効率いいかも。アニの反応も伺えるし」
アルミンが言った言葉に頷く。
「確かにそうかもしれないね!」

「俺は…まだアニが女型の巨人なんて信じちゃいないからな…」
「エレン…」
エレンの言葉にミカサが小さくため息をしながら呟いた。

エレン、アルミン、ミカサに自分のことを話して良かったって思った。
この日4人の絆が更に深まったと思う日だった。






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