確証



エルヴィン団長が椅子に座り、ミカサとアルミンもエレンの横に座った。

「目標は普段ストへス区中で憲兵団に所属している」
エルヴィン団長の言葉に私は息を飲み、エルヴィン団長を見つめた。
「今度こそ目標…女型の巨人を捕らえるために作戦を立てた。…決行日は明後日。その日に我々とエレンが王都に招集されることが決まった」
エルヴィン団長の言葉に驚いたようにエレンが目を見開く。
「現状ではエレンの引渡しは避けられない。そうなってしまえば壁の破壊を企む連中をおびき出すのが困難になる。ひいては人類滅亡の色が濃厚になっていく。…これらすべての危機を打開するべくして作戦は立てられた。これに全てを賭ける。次は…無いだろう」
私達は黙ってエルヴィン団長の言葉を聞く。

「大まかに説明すれば我々が憲兵団に護送される際にストへス区中でエレンが抜け出し、目標をおびき寄せて、可能なら地下で巨人化させることなく捕獲するのが目的だ。エレンを囮にして壁を壊す巨人の輩が捕えられるのであれば当然招集の話は無くなる。王都の意識も壁の防衛に傾くはずだ」

…女型の巨人、もし私の予想が当たっていれば…いや、当たって欲しくない。
「…女型の巨人の正体だが、それを割り出したのはアルミンだ。この作戦を立案したのも彼で私がそれを採用した」
エルヴィン団長の言葉に驚くエレン。
私はアルミンへと視線を移せば、唇を噛み締めまたエルヴィン団長を見る。
「…女型と接触したアルミンの推察によるところではいわく女型は君達104期訓練兵団である可能性があり、生け捕りにした2体の巨人を殺した犯人とも思われる。……彼女の名は……アニ・レオンハート」

…あぁ、やっぱり私の勘は間違ってなかった。
あの時私と目が合ったのはアニだった。
私は視線を下へと移して、テーブルを見つめた。

「…アニが?…女型の巨人?何で…そう思うんだよ…アルミン」
エレンが呟いた。その呟きに私はテーブルから視線をエレンとアルミンへと移す。
「女型の巨人はエレンの顔を知ってるばかりか、同期でしか知りえないエレンのあだ名『死に急ぎ野郎』に反応を見せた。何より大きいのは2体の巨人を殺したと思われるのがアニだからだ…。あの2体の殺害には高度な技術が必要だから使い慣れた自分の立体機動装置を使って…検査時にはマルコの物を提示して追求を逃れたと思われる」
「は…?どうして…マルコ…が出てくる?」
エレンが驚いたようにあの日死んだマルコの名前を呟いた。

「…わからない。僕の見間違いかもしれない…」
「オイ、ガキ」
アルミンの呟きにリヴァイさんが口を挟んだ。
「さっきから女型と"思われる"だとか言ってるが、他に根拠は無いのか?」
「はい…」
「アニは…女型と顔が似てると私は思いました」
アルミンの呟きに被さるようにミカサが言った。

「…私も女型の巨人は…アニのような気がする」
私は小さい声で呟いた。
「は?…おいなまえまでそんなこと言うのかよ!」
エレンが立ち上がった。
「あの日…私が女型の巨人に捕まったとき、片目だったけど目が合ったの。…あの時の目は…私がアニと対人格格闘やった時と…同じだった。私だってアニが女型の巨人だって…信じたくない。だけど…」
私はそれ以上言葉が出なくて黙った。

「…つまり証拠はねぇがやるんだな…」
リヴァイさんがみんなを見て言った。
「証拠がない…?何だそれ…何でやるんだ?どうするんだよ…アニじゃなかったら」
エレンが震える声で呟く。
「アニじゃなかったら…アニの疑いが晴れるだけ」
「そうなったらアニには悪いと思うよ…。でも…だからって何もしなければエレンが中央のヤツの生贄になるだけだ」
ミカサとアルミンが答えた。
「………。アニを…疑うなんてどうかしてる」
エレンが小さく呟き、椅子に座った。

「エレン、アニと聞いた今、思い当たることはないの?女型の巨人と格闘戦を交えたのならアニ独特の技術を目にしたりはしなかったの?…わかってるんでしょ?」
ミカサの言葉にエレンの目が見開いた。

きっとエレンも自分の中でアニが女型の巨人なんじゃないかって思ってるのだろう。
だけど、それを信じたくないってのが本音。
私だってそうだ。今だって女型の巨人はアニなんかじゃないって思いたい。

「…決行は明後日だ。それまでに全ての準備を終わらせる。今日は以上だ…」
そう言うとエルヴィン団長は立ち上がった。

「リヴァイ、あとは頼んだ」
「あぁ…」
リヴァイさんが答えればエルヴィン団長は部屋を出て行った。


その場に残った私達は黙っていた。
リヴァイさんが立ち上がり「俺は先に出る」と言い、部屋から出た。

残されたのはエレンとミカサとアルミンと私だけ。
もしかしたらリヴァイさんは気を利かせて部屋を出て行ったのかもしれない。


決行日は明後日…。
私にも不安しかなかった…。




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