懐かしい香り



私はしばらくその場から動けなかった。

私があっちの世界で過ごしたのは1日。
それじゃ…もう1年経ってるってことかな。
女型の巨人を倒すことできたのかな。
みんなはどうしてるの?

疑問がたくさん思い浮かぶが、全く足が動かない。
すると、ドアの方から聞き慣れた声が聞こえた。

「全く…もう少し考えて欲しいよ。リヴァイは扱いが雑すぎるから…」
「…クソメガネに言われたくねぇよ…」
ハンジさんとリヴァイさんの声が聞こえてくる。

「俺はもう寝る!」
"ガチャ"と扉が開く。
「ちょっと、リヴァイ!手伝ってくれるって……」
私はハンジさんと目が合った。
ハンジさんは目を見開いて私を見つめる。
「…なまえちゃん」
「…はぁ?クソメガネ、あいつの名前は出すなって……」
リヴァイさんがこちらを向いた。
目が合い、リヴァイさんもハンジさんと同じように目を見開いた。

「…リヴァイさん、ハンジさん…」
私は2人の名前を呼べば、笑顔を浮かべた。
リヴァイさんは私の元へと急いでくればそのまま抱き締められた。

「…っ、えっと…リヴァイさん?/////」
リヴァイさんから懐かしい石鹸の香りがした。
忘れることなどないあの落ち着く香り。
「……なんで戻ってきた。この世界は残酷って言っただろうが」
「ご…ごめんなさい。…でも私はやっぱりみんなの傍にいたいって思いました。ここにいたら…迷惑ですか?」
やっぱりリヴァイさんにとって私は迷惑な存在だったんだろうか。
ここに戻りたいって思ったのは間違いだった?

「バカ…!迷惑なんて思うわけないだろ。…あの日お前のことを守れなくて…悪かった。俺が守るって言ってたのに…」
リヴァイさんの言葉に涙が溢れて、首を横に振る。
「…そんなことないです。あの時、私が勝手に女型の巨人に向かって行ったんです。刃が通らないことオルオさんの見て分かっていたのに…ペトラさん達が殺られるのが本当に悔しくて……」
「もういい…なにも言うな…」
リヴァイさんはそう言えば、さっきよりきつく抱き締めてきた。
私はただただ溢れる涙が止まらずにリヴァイさんの胸の中で泣いた。


自分が住んでいた世界は平和だった。
でも今いるこの世界は平和とは言わない、残酷な世界…。
それでも私はここに戻りたかった。
104期の仲間たちの傍に…調査兵団の傍に…そして、リヴァイさんの傍にいたかった。
例えもう未来がどうなるか分からなくても…私はみんなの傍にいたい。
いろんな想いが溢れ出して、私はただ泣いた。
リヴァイさんは何も言わず、ずっと抱き締めてくれていた。


その場にいたハンジさんが静かにその場から去るのは全く気が付いていなかった。




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