どうか神様



…目が覚めた。
泣いたまま寝てしまっていたようだ。
陽はもう傾いていて窓から月が見えた。
私はゆっくりとソファーから起き上がり、ぼーっと窓から見える月を眺めた。

リヴァイさんのいる世界の月の方が綺麗だった。
もっと明るくて大きかった。
この平和な世界がきっと幸せなんだろう。
でも私は"戻りたい"と思ってしまう。
例えもう未来が知らない役立たずでも…それでも私は戻りたかった。

ソファーから立ち上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して1口飲んだ。
ミネラルウォーターの蓋を閉めて冷蔵庫へと戻す。
フラフラと歩きながら寝室へと戻ろうとすると、ふと目に入ったのは奈緒に借りたままの進撃の巨人のDVD。
その場に立ち止まり、私はDVDを手に取った。
案の定、頭痛が起きた。響くようにガンガンとするが私はそのまま我慢をしDVDを持ったまま寝室へと向かった。

寝室のドアを開ける……。
目の前に広がるのは自分の部屋。
頭痛は治まらず、唇を噛み締めてそのままフラフラとベッドに行けば倒れ込む。
DVDから手を離せば頭痛が治まった。

初めてトリップしたときは激しい頭痛のまま寝室のドアを開けた時だった。
…あの状況を再現したつもりだったのにな…。

私はゆっくりとベッドから起き上がればハンガーにかかる団服を見つめてそのまま団服へと手を伸ばせば、いつものように手馴れた手つきで着替えた。
団服を着る自分の姿を鏡で見ればそれはコスプレのようで…それでも長く着ていた団服は自分に馴染んでいることを物語っていた。

「もう一度…やっぱり私はみんなのところへ行きたい。例えもうこの世界に戻れなくても…私はリヴァイさんに…会いたいっ!!」
溢れる涙が止まらなかった。その場に崩れ落ち、泣いた。

しばらくして唇を噛み締めて、袖で涙を拭った。
目の前にある扉を見つめる。

どうか…もう一度戻れるなら…私を…進撃の巨人の世界へ戻して下さい。
みんなに会いたい…リヴァイさんに会いたい…。
もう未来は分からない。それでも私は…仲間を守りたいし、みんなの役に立ちたい。

私は立ち上がり、目の前のドアノブを握った。

どうか神様…
私をリヴァイさん達の元へ連れて行って…。


頭痛がし始める。
頭に響く痛みに顔が歪む。
あまりの痛さに唇を噛み締めて目を閉じ耐える。

「…リヴァイさん…お願い…」
私はドアノブを握ってドアを開けた………。



ドアを開けた瞬間、頭痛は治まった。
私はゆっくりと目を開けた。

そこに広がる世界…。
私がもう一度行きたかったあの場所。



見知った家具が並ぶ、とても綺麗な部屋。
私は安心したようにその場に膝をついた。
「……戻ってこれた」
私の小さな呟きは風のように消えていった。




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