幸せになれ



古城へたどり着けば、104期の連中も一緒に着いてきた。
大方エレンが心配なんだろう。

俺は馬から降りる。
「リヴァイ兵長…あのなまえの姿が見えないのですが……」
アルミンが俺を見て言った。
「……………」
俺はしばらく黙った。
「…アルミン、なまえは……」
エレンが荷台から起き上がり喋り出す。
ミカサがエレンを支える。

「おい…まさか……そんな訳ねぇよな?」
ジャンが真剣な顔でエレンを見る。
「あの時、ペトラさん達なら勝てると思った。女型の巨人だって追い込まれていたんだ……。それなのに……女型の巨人は簡単に仲間を殺した…。俺があの時巨人になっていれば……。なまえのことだって止めることができた!!俺の判断は間違っていた」
エレンが悔しそうに言った。
「………それって…なまえは女型の巨人に殺されたってことですか?」
サシャの声が震えていた。
「おい、サシャ!そ、そんな訳ないだろっ!だってなまえだぜ?あいつが死ぬ訳……」
コニーがサシャの言葉に反応して言う。

「……俺が守れなかった。俺のせいでなまえが…」
エレンの言葉に全員が黙った。
俺はその場から立ち去ろうとしたが、少し悩んで振り返る。
「おい、……あいつは、なまえは生きている。エレンは確かになまえが女型に殺られる所を見たかもしれない。でも…その場にあいつの遺体はなかった。詳しいことは話せないが、なまえは生きている」
俺はそれだけ言えば、馬を連れてその場を離れようとした。
「…リヴァイ兵長どういうことですか?俺は…俺はなまえが女型の巨人に殺られるところを見たんですよ!!…遺体がなかったって…どういうことですか?」
エレンが俺の背に向かって叫ぶのが聞こえた。
俺は振り返り、エレン達の方を見る。
「……そのままの意味だ。遺体はなかった。立体起動だけがその場に残っていた」
「立体起動だけ…?」
アルミンが呟いた。
「生きているならなんでこの場にいないんですか!?」
「エレン…」
エレンの隣にいるミカサが呟いた。

俺は深くため息をして104期訓練兵達を見た。
「…俺達となまえは住む世界が違う。これで良かったんだ」
俺は背を向けてそのまま古城へと向かった。
エレンの叫び声が聞こえたが俺はそのまま振り返らず、歩き続けた。


最後の言葉は自分に向けて言った言葉だ。
"これで良かった"
あいつが無事ならそれでいい。


自室へと戻ればいつもなら着替えるが、そのまま椅子へと腰を下ろした。
深くため息をする。
…また部下を死なせてしまった。
もっと早くあいつらのところへ行ければペトラ達も死なずに済んだかもしれない。
それにあいつだって……。


ドタドタと足音が聞こえたと思えば部屋のドアがノックなしで開かれた。
「おい…クソメガネ、部屋に入る時はノックしろと言っただろうがっ!」
俺はドアが空いた方へと視線を向けて、ハンジを睨みつけた。
「いやー、ごめんごめん。…なまえちゃんが使ってた立体機動装置持ってきたけど、ここ置いてていいかな?」
ハンジは立体機動装置を俺のベッドの横に置いた。
「もう戻って来ないのかな…」
ハンジがあいつの使っていた立体機動装置を見つめて呟いた。
「…これで良かったんだ。あいつは自分が住んでた世界で幸せになればいい…ただそれだけだ」
俺は立ち上がり、着ていた団服を脱いで椅子に掛けた。
「…リヴァイ…それ本気で言ってる?本当はずっと自分の傍にいてほしいって思って…」
「…うるせぇ!!」
俺はハンジの声を遮って声をあげた。
「これでいいんだよ。もうなまえのことは口に出すな…、いいな!」
「…はぁ、全く素直じゃないんだから。じゃ私は行くよ!」
ハンジはそう言って部屋を出て行った。
「…ちっ、くそっ…」
俺は舌打ちをしてそのままシャワー室へ入った。


なまえ、幸せになれ…。
巨人がいない平和な世界で…。




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