信じたくない現実



俺は仲間の元へ急いで向かっていた。
すごく嫌な予感がする。
何故か分からないが胸騒ぎがする。

あの時の…あいつらの時のように何かあったんじゃないかと思ってしまう。
願うのはただ何もないことだけだ。


その時だ、巨大樹の森に稲光のような光が辺りを包んだと思えば巨人が現れたような叫び声が森中に響き渡った。

この声…まさか…。

俺は来た道を急いで戻った。
声が聞こえたのは後ろの方だった。
俺の方が先に前に行き過ぎたのだろうか。

あいつが巨人になったとしたら…他の仲間はどうした?仲間の了承を得たのか?
なまえ…とにかく無事でいてくれ…。


俺は立体機動のガスを最大に吹かした。
途中木々を抜けている時に誰かが木にぶら下がっているのが見えた。
チラリと視線を移すとそれは俺の班の仲間、グンタだった。
俺は静かにその場を通り過ぎる。
その近くにはエルドとオルオが地面に倒れているのが目に入る。

俺の仲間はやられたのか?
……信じられない現実に頭がついてこない。
近くの木にはペトラが木を見上げるように倒れている。
俺はその木にぶら下がって止まった。

そうペトラの傍にはなまえが仰向けの状態で倒れていた。
俺は目を見開いてただただなまえを見つめた。

なまえの首元には俺があげたお揃いのネックレスが光って見えた。
「ちっ……」
俺は舌打ちをして名残惜しいがその場を離れた。


俺が守ると誓ったはずなのに、どうして俺は助けることができなかったんだ。
あいつの笑顔が思い浮かんだ。

「リヴァイさん!」
俺の名前を呼んでニコニコ笑いながら俺の元にやってくる。
その姿が俺は好きだった。
あいつの傍に…いたかった。


俺はエレンと女型がいるであろう場所に向かう。
女型を見つけたが、エレンの巨人のうなじがかじり取られたようにそこだけなかった。
その近くの木に同じ調査兵団の服を着た女を見つけた。
俺はそいつを掴んで立体機動で飛んだ。

「なっ、何を!?」
その女が言う。
「一旦離れろ!」
「……っ」
女は悔しそうな顔をした後、体を離して立体機動で2人で飛ぶ。
「この距離を保て!奴も疲弊したかそれ程速力もないように思える。うなじごとかじり取られていたようだがエレンは死んだのか?」
「………生きています!目標に知性はあるようですがその目的はエレンを連れ去ることです。殺したいのなら潰すはず…。目的はわざわざ口に含んで戦いながら逃げています」
「エレンを喰うことが目的かもしれん。そうなればエレンは胃袋だ。普通に考えれば死んでいる」
「生きてます!」
俺はチラリと横にいる女を見る。
「……だといいな」
「……そもそもが貴方がエレンを守っていればこんなことにはならなかった」
俺はジッと女を見ればふと審議場でのことを思い出す。
「そうか…お前はあの時のエレンの馴染みか。……目的は1つに絞るぞ。まず、女型を仕留めることを諦める」
「奴は…奴は仲間をたくさん殺しています」
「…皮膚を硬化する能力がある以上は無理だ。俺の判断に従え!エレンが生きていることに全ての望みを賭け、奴が森を抜ける前に救い出す。俺が奴を削る。お前は注意を引け!!」

女はそのまま注意を引くために女型の足の方へと向かって行った。
俺はそのまま飛び続け、ジッと女型を見る。

そして剣の持ち方を変えて女型の様子を伺っていればこちらを振り向いて殴ってこようとする手をスルリと交わして女型の腕を切り裂く。
そのままのスピードで女型の目に剣を刺せば一度離れてすぐ体制を変えれば女型を切り刻む。


……こいつだけは許さない。
俺の仲間を…殺した奴だけは許さない。


俺はうなじを守ろうとしている腕を中心に切り刻む。すると腕がスルリと落ちた。

するとさっきの女が女型のうなじ付近にアンカーを刺してうなじを狙おうと剣を構えて向かってくる。
俺は驚いた。
「よせっ!!」
思わず大声を出して止めに入ろうと立体機動をそちらへと向けて向かう。
女型は女を叩き落とそうと思ったのか片手を挙げたのが見えた。
俺はその女型が挙げた手をバネにしようした瞬間足首を捻った。

「……くっ!」
痛さに唇を噛み締めてそのまま女型の口を斬った。
すると女型の口が開いて女の言った通りエレンを口に含んでいた。
「エレン!」
女もそれが見えたのか声が聞こえた。
俺はそのまま立体機動でガスを吹かして口の中にいるエレンを抱えて立体機動で女型から離れた。

俺は近くの木に止まった。
「おい!ずらかるぞ!…多分無事だ、生きている。汚ねぇな…。もう奴には関わるな。撤退する!」
俺はチラリと女型へと視線を向けた。
「作戦の本質を見失うな。自分の欲求を満たすことの方が大事か?お前の大切な友人だろ!」
俺はエレンを抱えたまま立体機動でその場を離れた。
女型は許したくない。だが、今は作戦が優先だ。


俺は女が付いてきているか確認するために後ろを少し振り返れば付いてきているのが見えた。
それと視界にもう1つ目に入った。
……女型が泣いているのに。

俺はそのまま視線を前へと移して、立体機動で安全な場所へ向かうためガスを吹かした。


森を抜ければ荷馬車班などが集まっているのが見えた。
俺はエレンを馬車へと下ろすとすぐにまた森へ向かおうとした。

「リヴァイ!まだなまえ達が帰ってきてないけど……」
俺に声を掛けてきたのはハンジだ。
「……エレンのこと頼む」
俺はそれだけ言えば森へと立体機動で向かった。


死体回収は始まっている。
巨人に食われ、跡形もない奴もいるが今回は女型により殺されたのが大半を占めているため死体が多い。

俺が向かうと調査兵団の仲間がエルド達を回収し始めているのが見えた。
なまえはペトラの傍で倒れていたはずだ。


しかしペトラの痛々しい姿はまだ残っているもその横にはなまえの姿はなかった。

「……おい。ペトラの横に女いなかったか?」
俺は近くにいる調査兵を呼び止めて聞く。
「…いえ、ここには4人しか……」

ペトラの横にはただ1つ。
なまえが使っていた立体機動装置だけが残されていた。




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