世界は残酷



私達はリヴァイさんと合流するために立体機動で巨大樹の森を飛ぶ。

そして私達と数メートル横を調査兵団のマントを被ったリヴァイさんを見つけた。
「………違う。あれリヴァイさんじゃない」
私は横を飛び続けているマントを着た姿の人を見て呟いた。
直感とかじゃない。私にはリヴァイさんじゃないっていうのがすごく伝わる。

「…リヴァイ兵長?………いや、違う!!誰だ!!」
グンタさんはリヴァイさんじゃないと気が付いて調査兵団のマントを着ている人に叫んだ。
するとその人は立体機動を吹かして方向をこちらへと変えて飛んできた。

そのスピードは速く、剣を構えたかと思えばグンタさんを剣で斬った。
「………!!!」
私達は言葉を失った。
そのまま木にぶら下がる、グンタさんが見えた。
「グンタさん!ちょっと…どうして?」
エレンが思わず声をあげてグンタさんの元へと立体機動で向かった。
私もエレンの後を追いかける。

「グンタさん!!」
エレンは大声をあげる。
「………嘘だ。こんなの…」
私は震えてきた。もう何で震えてるのか分からない。怒りなのか、悲しみなのか。
「エレン、なまえ!止まるな!進め!」
オルオさんがエレンを抱き上げて飛び、エルドさんが私を抱き上げて立体機動で飛んだ。

「グンタさんがーーっ!!」
エレンを後ろを振り返って叫ぶ。
「……っ」
私とエレンはみんなと同じように立体機動で進んだ。
すると目の前にさっきの調査兵団のマントを着た人が現れた。

「誰だ!」
ペトラさんが声をあげる。
「エレンを守れ!…畜生!どうする、エルド!どこへ向かえばいい?」
オルオさんが叫んだ。
「馬に乗る暇はない。全速力で本部へ向かえ!」
エルドさんが叫べば私達はそれに従うように立体機動を吹かしながら全速力で飛ぶ。
こんなに必死に立体機動を飛ばすのは久しぶりだ。
震えはさっきから止まらない。

「女型の中身か?それとも複数いるのか?」
オルオさんがマントを着た人を確認しながら言う。
「くっそ…。よくも…かかってこい!差し違えてでも倒す!」
ペトラさんが振り返って叫んだ。

やっぱり…これで終わりじゃなかった。
私が知らない展開。
これは原作通りなの?それとも私がこの世界にいるからストーリーが変わってしまったの?
誰か…教えて…。

一瞬マントの人の姿が消えた。
私達は後ろを向いたまま飛ぶ。
その時だ。
あの見たことある光が森を包んだ。
そう…雷が落ちたようなあの衝撃が…。

「やはりか…来るぞ!……女型の巨人だ!!」
エルドさんが言った。
やっぱり女型の巨人だった。
全速力でこちらに向かって走って来る。

「くっそ…よくも…今度こそやります!俺が奴を!!」
エレンが叫んだ。
「駄目だ!!俺達3人で女型の巨人を仕留める!エレンとなまえはこのまま全速力で本部を目指せ!」
エルドさんがエレンと私を見て言った。
「俺も戦います!」
「私も戦います!」
エレンと私は声を揃えて言った。
「駄目だ!これが最善策だ!お前の力はリスクが高すぎる!」
エルドさんがエレンを見て言った。
「なんだ、てめぇら!俺達の腕を疑ってるのか?」
オルオさんが睨んで言う。
「そうなの?エレン、なまえ。私達のことがそんなに信じられないの?」
ペトラさんの真っ直ぐな瞳に何も言えなくなる。
「…………」

「我が班の勝利を信じています!」
エレンはそのまま真っ直ぐ速度を上げて行ってしまう。
「……なまえ、エレンのこと頼んだよ!」
ペトラさんが微笑んで言った。
「頼りにしてるんだからな!」
エルドさんが力強く言ってくれた。
「女型なんか俺達が倒してすぐに追いつくさ!」
オルオさんが自身たっぷりに言う。
「…………はい!待ってます。必ず、帰って来て下さい!!」
私も速度を上げてそのままエレンがいる方角へと立体機動を飛ばした。




エルドさん、ペトラさん、オルオさんは女型のいる方向へと立体機動で向かった。
エレンと私は後ろを確認しながら飛ぶ。

エルドさんが女型を引き寄せて、オルオさんとペトラさんが同時に女型の巨人の目を斬った。
「はっ!!」
「すごい…」
思わず私とエレンは声をあげた。
そのまま女型はうなじを守るように両手で覆って木にもたれかかった。

そして息を合わせてうなじを守っている両手に向かって斬りかかる。
腕をまるで削ぐかのように3人で腕を斬る。
しばらくすると女型の両手が落ちた。

「強ぇ…あの女型が一方的に…」
飛びながら思わずエレンの声が漏れた。
「やっぱりリヴァイ班は強いよ…」

いつも見ていた。
エルドさん、グンタさん、オルオさん、ペトラさん。
4人で仲良く一緒にいるところを…。
信頼しているからこそ、いろんな場面を潜り抜けてきたから…あの場でグンタさんを失った直後でもあんなに強い。
きっと勝てる。あの3人なら女型の巨人を仕留められる。


そう確信した時だった。
うなじに向かって飛んだエルドさんを女型は口に入れて潰した。
そのまま口から吐き出し、エルドさんの体は地面へと落ちる。

「………エルドさん!!」
私は思わず叫んだ。
「うっ……うわぁぁぁぁ!!」
エレンは方向を変えてみんなが戦う方向へと向かう。
私も後を追った。


「どうして?なんで?両目が見えなくなったんじゃ…。そんな早く回復なんてしないはず…」
私は飛びながら呟いた。

「ペトラ!!早く体制を立て直せ!!」
オルオさんの叫び声がした。
ペトラさんに向かって全速力で女型の巨人が突っ込んでくる。
「ペトラ、早くしろーーーーっ!!」
ペトラさんはそのまま木に足で潰された。

「………いや、嘘だ。嫌だ……」
私の震えは止まらないが、必死で立体機動を飛ばす。


オルオさんはうなじに向かって剣で削いだが、うなじは硬化しているのか刃が折れるのが見えた。
そしてそのまま女型の巨人に蹴り飛ばされた。


「……嘘。みんな…嫌…。嫌、いやだ…私が…私が女型を…殺す!!」
溢れる涙を抑えようにも抑えられず、視界を滲ませながらも私は立体機動をフルで吹かしてエレンを超えて女型に向かって突っ込んだ。

「おい!なまえ、駄目だ!」
エレンの叫びが聞こえた気がした。



「よくも…私の仲間を…許さない!!」
私は女型のうなじに向かって飛ぶ。
今までにないくらい力を入れてうなじを削いだがそこは硬化しているのか全く斬れず、刃が折れた。

「……っ!!」
すると、女型の巨人にワイヤーを掴まれた。
そして女型の顔の真ん前へと釣り上げられる。
………目が合った。
片目だけこちらをじっと見ている。

私はその目に見覚えを感じた。
一緒に訓練兵として過ごしてきた女の子。



「………アニ?」
女型の巨人は目を更に見開いて私を見たかと思えばそのまま地面へと落とされた。

何もかも落ちる瞬間はスローモーションに感じた。
これが死ぬということなんだなと感じた。


この世界に来た意味はあったのかな。
私は誰も助けられなかった。
もっとちゃんと原作を読んでいたらペトラさん達を助けられたのかもしれない。

みんなの笑顔をもっと見たかった。
ペトラさん達に訓練してもらった1ヶ月。
訓練兵のみんなと過ごした2年半。
調査兵団に入った1ヶ月。

私には何ができたのだろうか。
リヴァイさん……もう一度会いたい。
声が聞きたい。
貴方に触れたい。


私は……リヴァイさんが好きです。


背中と頭に衝撃が走り、そのまま私の意識は途切れた。

エレンが私を叫ぶ声が聞こえた気がした……。






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