絶対に帰る約束



リヴァイさんが去っていく背中を見つめながら私はその場に立ち尽くした。

"恋"なんて気持ちを持ってはいけない。
好きになってはいけない人。

私はネックレスを握った。

私は人並みに恋もしてきた。
彼氏も出来たことだってあるし、一通りも経験しているけどそれでもこんな気持ちは初めてだった。


手を伸ばせば届くのに、とても遠い。



お昼の時間になり、私は食堂へ行くとリヴァイさん意外揃っていてこっちをジッと見ている。
「み、皆さんお揃いで…」
私が苦笑いをして言えばペトラさんがこっちに歩いてきて私の腕を掴めばニヤリと笑う。
「なまえちゃん、話して貰うからね!」
「えぇ!?ペトラさん待って下さいよー!そんな話すことなんてないですよー!」
私の言葉も聞かずにペトラさんに椅子に座らせられた。
もちろんテーブルの上にはお昼ごはんが準備されていた。

「兵長と泊まってきたんでしょ?何もないなんてことないよね?」
ペトラさんの目はもう探るような目だ。
助けを求めようとグンタさん、エルドさん、オルオさんを見るも3人共同じ顔をしている。
エレンを見るとエレンまで興味があるような表情をしていたため私は深くため息をした。

「本当に皆さんが思ってるような期待することは何もなかったですよ。ただ、雨で帰れなかったので一緒の部屋に泊まったってだけです。本当に何もなかったんですからね!」
私はそう言えば、パンを千切って口に入れた。
みんなの表情はガッカリしていた。

「絶対何かあると思ったのにな」
エルドさんの言葉にみんな頷いていた。
「あれ?なまえそんなネックレスしてたか?」
私の真ん前にいたエレンが私の首元に付いているネックレスを指差した。
「へっ?……あっこれは…その…」

「…兵長からのプレゼントなんだ」
ペトラさんが隣でニヤニヤしている。
「えっと……はい。リヴァイさんが買ってくれました」
「さすが兵長だな!」
「青春だなー」
「くっ、羨ましいぜ…」
みんなの言葉に私は恥ずかしくなりスープを一気に飲み干した。

「私は部屋に戻りますね。失礼します!」
私は慌てたように食堂を飛び出した。
さすがにネックレスに名前まで入っているなんて話はみんなにはできない。
話す以前に恥ずかしすぎる。


私は部屋に戻ってからは本を読んだりして過ごした。
たまにリヴァイさんの部屋の方からハンジさんの絶叫が聞こえる。
きっとハンジさんがリヴァイさんに怒られているんだろうなと思いながら苦笑いをした。


夕方頃に部屋がノックされた。
みんなが訓練が終わった頃の時間だろう。
「はい」と返事をすればペトラさんが入ってきた。
「なまえちゃん、同期の子が呼んでたよ。外で待ってるって」
「あっ、分かりました。ありがとうございます」
私はペトラさんにお礼を言い、読んでいた本を閉じて机の中にしまった。
そして外へと向かった。


待っていたのはアルミンだった。
「あれ?誰かと思ったらアルミン!どうしたの?」
私は待っていた人物に微笑んだ。
「久しぶりだね。たまにはなまえと話したいなって思ってさ」
私はそんなアルミンの言葉に嬉しくなり微笑んだ。
「私と喋っても面白い返答は返せないけどね」
「面白い返答を期待してる訳じゃないよ。ただなまえと話したいって思ったんだ」
アルミンの言葉に私は驚いた。
真っ直ぐ私を見るアルミンに私は微笑む。
「アルミンって意外に素直なこと言うんだね。まぁここで話すのもあれだし…あっち行こうか?」
「うん」
私とアルミンは場所を移動する。

「今日の訓練終わったの?」
「うん、終わったよ。今日は立体機動の訓練と長距離索敵陣形の話をしたよ」
「アルミンどこの配置なの?」
「僕は右翼側なんだ。なまえ達は右翼前方辺りって企画書には書いてあったよ」
私はアルミンの言葉に一瞬耳を疑った。

確かリヴァイ班の配置の場所はみんなバラバラに伝えられているんだ。
リヴァイ班の配置場所を知っているのはごく僅かの人数なんだろう。

「うん、そうだよ。ねぇ、アルミン…壁外遠征で死なないようにしようね。絶対帰って来ようね」
アルミンは驚いたような顔をしてこっちを見たけどすぐに微笑んでくれた。
「うん、絶対に帰ろう。約束…」
アルミンはそう言って小指を差し出した。
私は微笑んでアルミンの小指に指を絡めた。
「約束」
私はアルミンと"帰って来る"と約束をした。
そして指を離した。

「私が今から言うことは独り言だから何も聞かずに聞いて……。今回の壁外遠征は簡単には上手く行かないと思う。私達が出会ったことない巨人に遭遇すると思う。だけど…絶対に大丈夫だから。冷静になって考えたらアルミンなら正解に導く。仲間は周りにいるから、仲間を信じて帰って来ようね」
私は沈み始めた夕日を見ながら言った。
アルミンの顔は見なかったからこの時どんな表情をしていたのかは分からない。

「……なまえ、今のはどういう…」
「さて、帰ろうか。暗くなる前に帰らなきゃね」
私はアルミンの言葉を遮って言えば来た道を引き返し始める。
「なまえ待ってよ!」
アルミンは後ろから私を追いかけてきた。

「ねぇ、なまえはもしかして未来のこと知ってるの?」
アルミンの一言で私はその場に立ち止まった。
この質問をされるのは2度目だ。
1度目はアニにされた。
あの時はアニが自分からそれ以上聞くのをやめてくれた。
でも今は違う。
アルミンは私の答えを待っている。

「……ゆ、夢を見たの。…私ってたまに予知夢みたいなの見ちゃうことあるから…もしかしたらって思ってさ」
私は振り返ってアルミンを見て、自分の髪の毛を触りながら微笑んだ。
「そっか。夢か…。予知夢…もしそれが本当になったらすごいね。…なまえの言葉忘れないよ」
アルミンは私の嘘を信じてくれたのか微笑んでくれた。

「帰ろっか。もう暗くなるし」
私はアルミンの声に頷いて2人で戻った。



アルミンと別れてから私は古城へ戻り、明日からのまた訓練に備えて早めに寝ることにした。

壁外遠征まであと少し。
どうか神様、少しでも死者が減りますように。
そして女型の巨人が捕まって、正体が分かりますように。


私はこの時は何も知らなかった。
後悔するのはもう少し後の話…。。




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