※遥と真琴が高校1年です。





無事に受験戦争を乗り切った俺とハルはめでたく4月に岩鳶高校へと無事入学する事ができた。
ハルは相変わらず水大好き人間で、隙あらば脱いで泳ごうとするししかもいつの間にか水着はいてるし…。
とりあえず4月の泳ぐにはまだ寒い時期だから突然海で泳ぎだしたりとかは無いし、岩鳶高校のプールは使えないみたいで学校に泳げるような設備も無いからいきなり脱ぐことは無い…と思う。


「ハル、俺達クラス一緒だよ!ほらあそこ!」
「ああ」


同世代より高い身長を駆使して張り出されているクラス票をひょいと見れば自分の名前から下の方に遥の名前を見つけた。これから一年遥と同じクラスだ。
多分また自分がおせっかいながら世話を焼くんだろうなぁと思いつつ眺めていると近くでひょこひょこ動く頭が目に入った。
なんとなく見た事があるような気がして注意深くジッとその頭を見つめるとチラッと顔が見えて……あ、思い出した。


「あれ?きみ…」
「はい?」
「……ひょっとして、名前ちゃん?バックの!」
「どちら様ですか…?」
「真琴!橘真琴!ほら、スイミングクラブの合同合宿で毎回同じコースで泳いでた!!」
「あ………あああああああ!!真琴君!?真琴君なの!?」
「そうだよ!うわあ久しぶり!!」


過去にスイミングクラブの合同合宿でバックが集まって練習していたコースで毎年一緒に練習していた名字名前がそこにいた。学校もスイミングも違うから合同合宿か大会でしか接点が無かったけれどそれなりに仲良くさせてもらっていた。名前も真琴を思い出したようで目を零れそうなくらい大きく開いて驚いた顔をしている。


「久しぶり!中学1年の大会で会ったきりだから2年ぶり?前から高かったけど凄い身長伸びた!?可愛い真琴君がイケメンになってる!」
「お世辞でも嬉しいよ。名前ちゃんも美人になったね!最初わからなかった!あ、紹介するよ。こっちは遥。七瀬遥。前はフリーをやってたんだよ」
「…どうも」
「初めまして、名字名前です。フリーってことは、真琴君と同じスイミングクラブにいたんですか?」
「ああ」
「うちのクラブが潰れるまで、毎年年始に近くのクラブが集まって合同合宿してたじゃない?その時に名前ちゃんも毎年参加してたんだよ。ハル覚えてる?」
「合宿は覚えてる、でも名字さんは知らない」
「七瀬君とはコースが違いましたから無理もありません…クラブ、潰れちゃったのは残念でしたね…あ、そうだ。良かったらうちのクラブに入会しない?私今バイトしながら選手やってるんだけど真琴君たちもどう?」
「あー、えっとそれは…」
「俺は遠慮する。競泳はもう辞めたんだ」
「…こういうことだから…あとハルにバイトでもコーチが務まるとは思えないし」
「おい」
「そうですか…残念です…」
「…ええっと、名前ちゃんはまだ続けてるんだね?」
「うん。クラブ通いながら中学も一応3年間水泳部やったんだけど、部活じゃ思い通りに泳がせてもらえなかったから…」
「泳がせてもらえなかった?」
「私がバック専門なのは知ってるでしょ?けど中学2年から、大会で1位の人間を沢山出して点数を稼いで総合優勝するために2コメとかに飛ばされちゃったの」
「そうだったんだ…」

「名前ー!帰るよー!!」

「あ、ごめん。私友達待たせてるの。また今度ゆっくりはなそ?」
「うん、引き留めてごめんね」
「大丈夫。じゃあね真琴君、七瀬君もさよなら」
「また明日」
「さようなら」


名前はくるりと体の向きを変えると友達らしき声がしたほうへと小走りに去って行った。
すん、と鼻を鳴らした真琴は制汗剤らしき爽やかなマリンの香りの名前の残り香を吸いこんだ。決して変態的なそれではなく男子高校生の反射的行動であると記しておく。



「ねぇハル…」
「なんだ」
「潤ちゃん、キレイになってた」
「そうか」
「俺…名前ちゃんに一目惚れしたかも…」
「……そうか」
「それだけ!?」
「それ以外にどう言えと」
「そりゃあそうだけど…!」
「俺は帰って水に浸かる」
「あっ!ハル、待って!ハルってば!」



懐かしい君はキレイになっていた