初夏の夜。基本的に金銭的余裕がない生活をしているあたしは当然寝る時も冷房なんてつけない。その日の夜は、特になにかがまとわりつくような、寝苦しい夜だった。

「んー」
「んーじゃねえ」

ごろんともみくちゃにされたタオルケットと共に寝返れば目と鼻の先に何者かの顔面が。その密着度と驚きのあまり汗がぶわっと噴き出た。しかし問題の何者かは坦々とした表情で此方を凝視している。一体何事。江戸がこんなに恐いところだとは銀時の目の煌きほども思ってなかったよ、田舎が恋しいなあ、おかあのたくあんが食べたいなあ。

「おい、きいてんのか」
「あーはい、なんでしたっけ」

しかし冷静に考えてみればこの声と暗くてもある程度確認できる顔を半分ほど覆った包帯の持ち主はひとりしかいなかった。晋助はなんか知らないけどイライラしてるっぽい。なんで

「おい」
「なんでしょう」
「ヤらせろ」
「は?」

そういうが早いか晋助はあたしの上に馬乗りになりやがった。ちょ、おま。

「暑い」
「他に言うこたァねえのか」
「死ね」

そういうと口を塞がれてしまった。ああああああついあついですあつい

「…は、あんたさ、何しに来たの?」
「ヤりに」
「はァ?」
「溜まってイライラしてんだよ」

ああ、そういうことか…そう思うと頭はスッと晴れて行く。こういうことは初めてだったけど、暑さを理由に一週間も会わなければこの性欲魔人がこうなる事は想像に易い。

「じゃあさあ…晋助の船にいこーよ」
「んだよ急に」
「涼しそう」
「……」

流石に怒るかな、と晋助の顔を見つめていたら晋助は立ち上がって「早く行くぞ」と呟いた。あたしはニヤリと笑んで晋助の後を追った。

夜ばい
あー涼しい。晋助大好きー
お前…覚悟はできてんだろうなァ?




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