あの頃に戻りたい。いや、戻りたくない。

あの何も考えなくても幸せに暮らせた毎日に戻れたらきっとわたしはこの上ないほど幸せだ。桂と高杉と坂田と、毎日ただなんとなく過ごす。なんて素敵だろう。でもそれじゃあ足りない、決定的に足りないものがある。わたし達に武士道と言うものを教えてくれて、人間としての有り方を教えてくれたあの人は、もうここにいない。もう、戻ってきてくれはしない。松陽先生もあの時間も。

「明日なんて、来なければいいのに」

坂田に逢いたくない、高杉にも逢いたくない。坂本には元から逢いたいなんて思わない。するとわたしの行く場所は桂に決まる。桂と一緒に居るのはすごく楽だ。昔から一緒に居るから気を使う事もないし、大抵の事は聞いてこないし、だからと言って重く押し黙る事もなくわたしを笑わせてくれる。大人だ。わたしと年なんて大して変わらないのに、桂は自立することによって面倒な事から逃げてるのかな。だったらわたしは邪魔かな

「一日も早く戦争を終わらせるのが俺達の仕事だろう?」

そうだ。桂は正しい。わたしたちの目的はそれだ。でも明日は、鬼兵隊と一緒に戦に出る日だし、明日のご飯当番は坂田と一緒だ。なんて最低な一日だろう。昨日はでは、いつもどおりの幸せとはいえないけど、それなりに充実した一日になるはずだったのに。これもどれもみんな坂田の、いや、わたしのせいだ。
きのうの、夜中。無理やりだった。そんな風に言い訳をしても本気で否定仕切れなかったことに代わりはない。わたしは莫迦だ。こんな事になってしまうのは解っていたのに。坂田に良く似ていた。最中の高杉が。苦しそうに、むさぼるように。わたしから何もかもを奪ってしまうから。怖がっていたから、今の世界を。似ていれば誰でもいいのか、わたしは?違ったはずだ。違ったはずなのに。嗚、もう何も考えたくない。

「そうだね」

それでも明日は来る。どうしようもない。来るもんは来るんだ。嫌だ、逃げたい。でも昔に戻るのは怖い。再びあの無償の愛に触れるのは怖い。結末が怖い。過去が怖い。今のままなんて嫌だ。

嗚、わたしが吉田松陽の娘でなかったらこんなに苦しまずに住んだのだろうか。






さよなら本日
またきて明日


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