それは、妙に空が青い真夜中のことだった







ぴるるるるるるぴるるるるるるるぴる「もしもーし、こんな夜中にだれですかー?」

『ぎーんー』

「お前か、どうしたよ」

『ばいばい』

「んだよ真夜中にいきなり電話かけてきやがってもう終わりですかー?」

『ちげーよ馬鹿』

「はァ?銀さん意味わかんないんですけどー」

『あたしもう銀と一緒に居られないみたい』

「……は?」

『だから銀はあたしのことなんて忘れて、幸せになってね』

「ちょ、待てよ」

『あたしは最期まで銀の彼女で居られて、幸せだったよ。』

「なんの冗談だよ…っ」


ブツッ・・プープープー・・

ぴる「もしもし?お前どうしたんだよさっき―――…『銀時!?お前何言ってんだ?』

「なんだ、多串くんかよ」

『…よくわかんねぇが、まァいい。よく聞けよ』

「あー?んだよ急に、」

『あいつが死んだ』

「…いみわかんねえ」

『ついさっきだ。もともとあいつァもう長くなかっただろ』

「……わかんねえよ」

『・・銀時』

「さっきだってあいつ、電話してきたんだぜ?」

『おい、お前「なのにもうお別れだとか幸せになれだとか、ほんっと・・いみわかんねえ」

『とにかく、大江戸病院まで来い』




走った

今までこんなに全力で走ったのは初めてかもしれない。全てを振り払いたかった、あいつの死を否定したかった。眠らない町かぶき町の賑わいの声など耳に入りもせず、ただ聴こえるのは自分の荒い息と心音、そしてあいつが俺に寄越した電話の最期の一言。幸せだったよ。幸せな奴はあんな哀しそうな声ださねェんだよコノヤロー。いき絶え絶えであいつの病室までやってきてみると、悔しそうに目を伏せる総一郎君と、多串君。そして白い布を被って寝ているのが―――








ピー
ただそこには心拍停止を告げる電子音が虚しく響いていた。

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