彼が全てを壊したいのなら、いつか私も壊されてしまうかもしれない。
それでもいいと、思った。愛する人に殺されるのなら本望だと、思わずには居られなかった。むしろ、愛する人に殺して欲しいと思う程だった。なのに、まさか。


「馬鹿じゃないの」


だらだらと留まる事をしらない涙は私の頬を濡らし着物にシミを作る。少々サイズの大きいこの紫色の着物は、生前の高杉が毎日のように着ていたものだ。もう馴染んでしまって取れない煙管の煙の匂いも、高杉の匂いも、今となってはただ私の涙を誘うだけだ。それでもこの着物を着ている私は、本当にただの馬鹿かもしれない。


「壊す前に殺されてどうすんのよ」


先生のお墓のすぐそばに、高杉のお墓がある。立ち上る線香の煙が、高杉が死んでしまった事を強調しているようで不思議な気持ちだった。どれだけ愚かなのだろう、私は、高杉は、この世界は。


「本当に、ばか、みたい…っ」


壊そうと思った。
未来を、世界を、愚かな自分を。黒い獣が体の中を這いずり回って遠吠えをあげる。ふつふつと沸き立つ殺意は、高杉が私に乗り移ってしまったのかも、知れない。ああ、一緒なんだね。私達。


Only one leaves the truth.
ただ一つだけ真実を残そう



(私は晋助を愛してた)


-----
濁声


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -