解っています。
解ったフリをしています。

雀が囀る朝。布団には今日もまた、一人分の空白が有りました。朝はいつもこうです。わたしの愛しい、愛しい彼は、私を起こすでもなく、連れて行くでもなく、ただ一人で行ってしまいます。連れて行ってくれたらいいのに、なんて何度考えたでしょうか。きっと朝が来た回数だけ私はそれを考えているのです。今までも、勿論、これからも。

「あ、起きた?」

…しかし、今日は違いました。なんととうにこの部屋を後にしているはずの彼が布団の横に正座をして、待ってくれていたのです。私は一瞬何が起きたのか、理解できませんでした。また大半の隊士が眠っている丑三つ時、ようやく顔を出し始めた朝日が障子をすり抜けて彼に影を作っていました。

「退…さん?」
「一緒に行こう」

差し伸ばされた手を掴むのは、もう決められた未来なのです。

私一人を残せますか

解っています。
解ったフリをしています。

今日もこうして彼は、わたしには到底理解できないようなな考えで、わたしに希望を、未来を齎してくれるのです。

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企画サイト様「誰も寝てはならぬ」様に提出

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