今日は朝から天気が悪かった。ざあざあ土砂降りが降っていて、咲き始めた桜も大分散ってしまっているだろう。残念だなぁと外を眺めていたら銀時がこっちに近づいてきてあたしの上にのしかかった。

「ねー、超愛してる」
「…は?」

行き成りなんてこと言うんだ。確かにあたしと銀時は付き合ってるけど、行き成り言われるとは思ってなかったから急に顔に熱が集まる。

「だからいちご牛乳買ってきて」

冷めた。顔に集まっていた熱がスーッと消えて代わりに沸いてきたのは殺意。なんなんだコイツ、いくら雨降っててメンドクサイからって、そんな言葉であたしを利用するつもりか!

「ねー…「死ね糞天パドブ川に落ちて腐れこの粗チン野郎」…へ?」

パンッ、思いっきりほっぺを引っ叩いてやった。この野郎。まだ怒りが収まらないので2、3発蹴ってやった。そしたら間抜けな声が聞えてきて更に感情的になったあたしは家を飛び出した。
外にでると雨はいつの間にか威力を亡くし正に春雨と言う感じだった。傘もささずに歩くと服が水分を吸ってきもちわるい。雨宿りできるところなんて無くてそのまま歩き続けた。服が水を吸うのと比例してあたしの罪悪感も増えていった。流石にあそこまで言う必要はなかったかも。悪いのが銀時で、そこは譲らないけど、なんだか申し訳なくなってきたあたしは万事屋に帰ることにした。他に行く当てもないしね。

「…ただいま」
「あァ」

会話はない。なんだか哀しくなってきて、でも銀時に話しかける事は気まずくてできないのであたしはもう寝る事にした。布団に入ると直にウトウトしてきて、もう直寝てしまうって頃に襖が開いた。神楽ちゃんは妙さんの家にお泊りに言ってるから今日はいない。つまり襖を開けたのは銀時だ。どきどきしながらあたしがそのまま寝たふりを続けていたら銀時が布団の中に入ってくる。いや、毎日一緒に寝てるんだけどもね?そして反対側をむいて寝てるあたしをぎゅっと抱きしめた。一体なに?銀時はあたしの事寝てるって思ってるはずだし…

「ごめん」

聞えたのは耳元で発せられた、低くて寂しそうな声。それだけで心臓がばっくんばっくんと煩いのに静かな息遣いまでもが耳の神経を支配して頭がおかしくなりそうだ。

「流石にあれは、なかったよなァ…」

独りでしゃべり続ける銀時、あたしはそれを静かに聴いていた。哀しそうな声が本当に反省してる事を窺わせた。

「お前が俺のところから離れていく理由なんていくらでもあるのに、お前は俺から離れないって、なんかよくわかんないけどそう思ってた」

ぎゅ、銀時のあたしを抱きしめる力が強くなった。こんなことじゃあたしは離れていかないのに、ううん。なにがあっても銀時から離れたりなんてしないし、したくないのに。

「冗談とかじゃなくて、本当にお前のこと愛してっから」

それっきり銀時は喋らなくなった。はじめは心臓が痛くて中々眠れなかったけど、いつもの銀時の鼾と腕の温もりを感じていたら自然と瞼は落ちていった。





今日はとてもいい天気だ。昨日の雨が嘘みたいに、銀時より遅く目覚めたあたしは遠慮がちに襖を開いた。そこにはあたしに背を向けるようにして座りジャンプを読む銀時がいた。新八君と神楽ちゃんはどうやらもうさだはるの散歩に行ってしまったらしい。

「ねえ」
「…なに」
「超愛してる」

聞えてきたのは昨日と同じ言葉、でも夜に言われた事を思うとあまり怒る気にはならなかった。

「だから銀さんといちご牛乳買いにいきませんか?」

よく見てみると銀時の耳は真っ赤だ。どんだけ恥ずかしがってんだ。オッサンの癖に、なんでそんなに格好いいんだ。

雨に散った桜は二人の歩く道を桃色に染め上げました

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企画サイトsweet10様に提出
まだ雪降ってるのに…季節感皆無ですいませんでした!!

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