処女を卒業した。童貞をもらった。
今は裸で余韻に浸っている。

たぶん寝てはいないだろう。伏せられた長いまつげを見つめてみる。
驚いたのは、この美しい顔で、高校生にもなって未だに恋人のひとりもできていないことだった。しかも、いつものツンとお高くとまった姿はどこへやら、恋人という肩書きの私に対する態度は、いまどきの中学生以下だ。

幻滅したどころか、それがすごくすごく愛おしい。
そういうと彼はきっと拗ねるから、私だけの秘密だ。

「今泉」
「ん、?」

ゆっくりと瞼を開く、その子どものような表情に、また胸が縮こまって仕方がない。

「ドーテー卒業おめでとう」

そういうと今泉は長いまつげとぱちくりと揺らして、「あんま女がそういうこと言うなよ」と私のおでこをつついた。普通の人には絶対にしない、恋人間のコミュニケーションだ。

「もう夕方だな」
「必死だったからね、妹さん帰ってくる?」
「ん、でも」

窓の外ではゆっくりと日が傾き始めていて、この甘やかな時間も終わりを告げようとしていた。

「もう少し、このままで」

素肌が素肌に触れて、まだシーツの海に溺れたまま。





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