「辰馬」
「なんじゃ」
「寒い」

誰も居ない教室のストーブの横で、辰馬と隣り合ってしゃがんでいた。
しかし、教室に私と辰馬しかいなくなった時点でストーブは消えた。徐々に薄れてゆくぬくもりを諦め悪く追っていたものの、それももう限界だ。

「女子は足出さんといかんき大変じゃのー」
「そうなの、タイツにも限界があるの」

もそもそと辰馬にくっつく。
生来女好きの辰馬はそれに気を良くして、あぐらをかいた上に私を誘う。いつもなら絶対に足の間に収まろうなどとは思わないが、今はとてもぬくもりに溢れる場所に見える。

「わしが温めちゃる」
「……。」

明らかにそこには下心があるのに、辰馬の子供のような無邪気な笑顔が、私の抗う力をみるみる奪い去っていく。

「ぎ、銀時たちに見つかったら、うるさいし」
「あんな白髪ほっときゃええんじゃ」
「う…」

未だ戸惑う私に、両手をぐっと伸ばして辰馬が乞う。

「寒い寒いと可哀想なおまんを、わしが温めてやりたいんじゃ。な?ええじゃろ?」

そこはとても暖かかった。顔が赤くなるほどに。

いとも簡単に魅力的になっていく


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