ないた。池沢君が、泣いた。子どものように泣きじゃくるのではなく、悔しそうでも、ましてや嬉しそうでもなく。ただ少し悲しそうに、泣いている。


私、クラスでいじめられてる女の子。友達は一人だけ、同じクラスで目立たない池沢君っていう男の子。前髪が長くて、あんまり喋らないからクラスの皆にオタクだと思われてる。どうして池沢君はいじめられないのに、私はトイレに呼ばれて殴られたり、髪の毛を切られたりしないといけないんだろう。先生はどうして助けてくれないんだろう。どうしてお父さんとお母さんは私の体が痣だらけでも急に髪の毛を切って帰ってきても何も言わないんだろう。

そんなようなことを、友達の池沢君に言った。ひどく平淡な口調になった。でも、辛い事を辛そうな口調で言う事って、そんなにないと思う。そこに感情移入すると、余計に辛いから。

「泣くんだ」
「は?」
「池沢君って、涙を持ってたんだね」
「…よくわかんないけど、なんか失礼なこと言ってるよね」

誤魔化すために笑った。はっはっは、なんて変な笑い方をして、目を細めたらそこから水があふれ出た。

「お前だって、泣いてる」
「そっか、私、涙を持ってたんだね」
「うん、恐かったんだよ」

私の支離滅裂な言葉から、池沢君はわかってくれた。そうだ、私は、ずっと恐かった。
恐がっている事をわかって欲しくて、でも恐がっていると知られたら漬け込まれてしまいそうで、池沢君意外に信じられる人なんているのかもわからない。でも、池沢君は、どうして信じられる人なんだろう。

「友達がいないから、だろ」
「そうか、池沢君いつもクラスでひとりだもんね」
「お前も」

そうだ。人々は恐い。人はこんなにも容易い。

「じゃあ、もう平気なフリ、しなくていいかな」
「うん、明日から一緒に登校しよう」
「そうだね、じゃあ、私池沢君が好きだよ」
「じゃあって何だよ、まあ、知ってたけど」


ぽろり、と感情が溢れ、わたしのまわりが潤っていくのです

そしたらどうして、いじめはなくなりましたとさ


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