「く・れ・ぐ・れ・も気をつけるように」
「……はい!」

今日は電車で割と遠くまで買い物に行くらしい。この辺じゃどうしても手に入らないものを買いにいくんだとか。何を買うのかは聞いてないけど、家に私一人置いていくのも気が引けるようで私もついていくことになった。朝からずっと佳主馬はピリピリしていて、事あるごとに私に決してはぐれないように念を押してきた。確かに私は折り紙付きの方向音痴だけれど、これは少しやりすぎのような気もする。

「…じゃあそろそろ行くよ」
「はーい」

相変らず彩度の低い服を着こなしている佳主馬と共にマンションを出る。今日は天気もよく、だけど決して熱すぎることもなく、絶好の外出日和だ。佳主馬の後に付いて駅に向かう。ふいに佳主馬が口を開いた。

「俺、大学は東京にしようと思うんだ」
「へえ、そっか!じゃあ今度は佳主馬が私の家の近くに来るんだね」
「うん。でもうちあんまりお金ないしさ、キングカズマが稼ぐ賞金も当面は使わない予定だし、」
「そうなの?マンションとか借りてるから結構使ってるんだと思った」
「まあマンションは、思いのほか高くないし」
「(絶対嘘だ…)その、キングカズマの賞金は将来何に使う予定なの?」
「え?まあ、将来家庭を持った時とか、家建てたりする時に」
「おー…なんか佳主馬、いいお父さんになりそうだね。きっとお嫁さんも喜ぶだろうね」
「…あんま嬉しくない」
「え、そう?」
「…話戻すけど、大学は学費だけで手一杯だと思うからあんたの家に泊めてね」
「うん、全然いいよ……ん?」
「うん、ありがとう」

何かうまく口車に乗せられてとんでもないことを口走ったような気がするけど…気のせいってことにしておこう。
5分程で駅に付き、人が多くなってきた。佳主馬は背も伸びたからちゃんと追う事が出来るけど、やっぱり少し大変だったりする。

「大丈夫?」
「うん、まあ、大丈夫」
「…大丈夫に見えない」

佳主馬が眉間にシワを寄せ、私の手を取った。え、なんなの。そのままずんずん歩いて行ってしまう佳主馬に少々戸惑いながらも後を追う。

ジレンマ!

何なのその言い方!まるで僕のお嫁さん候補にアンタが入ってないみたいな言い方!
…な佳主馬

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