「おっきくなったねえ」としみじみ思っていたことを口にすると、佳主馬くんは「年寄りくさい」と言って鼻をつまんだ。
「年寄りくさいって、そのくさいじゃなくない?」
「いいんだよ、どうでも」
佳主馬くんはもうすぐ高校二年生になる。私はそれを追いかけるように高校一年生に。いくら急いでも縮まらないこの距離を私はもう諦めた。
中学二年生の頃は私と少ししか変わらないような身長だったのに、今ではもう、私は佳主馬くんを完全に見上げている。
「高校生かあ」
「大丈夫、案外普通だよ」
そうかなあ。声に出さないで呟く。佳主馬くんは高校生になって身長がぐんと伸びて、身体も大人っぽくなって、女の子にちやほやされるようになった。
何の恥じらいもなく佳主馬くんとの距離を縮められる女の子達を、私は少し羨ましく思う。
「高校生になったら、」
「うん」
「彼氏とか、できるのかなあ」
そしてそれは佳主馬くんなのか。そうだったらいい。そうなってほしい。大人の階段を登る行為に、平穏なんて存在しない。必ず私達の何かが変わってしまって、心の距離も離れたりくっついたりする。経験なんて無に等しいけど、私はなんとなくそれがわかる。
「彼氏、ほしいの」佳主馬くんが今までとは違う声でぼつりと吐き出した言葉は、そのまま床に落ちて消えた。私はその言葉の真意を考えあぐねた後、ゆうやけの広がる河川敷の遠くを眺めながら呟いた。
「佳主馬くんだったらいいな」


あれもこれも大事なんてうそだね

たったひとりいればいい
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