俺の目の前に座る女はあきらかに苛ついた顔で俺を睨んだ
「男ならそんなみみっちいこと考えてないでさっさと行動にするのが一番よ」
「んなこと言ってもよォ…考えてみ?そちゃ緊張もするだろ!」
「あらそう?そんなケツの穴の小さい男のようじゃ相手にならないわね」
「なっ…そうかよ、やってやらあ」
まだ開店前のすまいるに入れて貰えたのは、俺がここのキャバ嬢兼用心棒の弟の上司だったりなんかしちゃったりしたお蔭だろう。すまいるのキャバ嬢兼用心棒の志村妙は、足を組み、貧相なパイプ椅子に掛ける俺を舐めるように見て辛口な意見を連発する。いつもその口車に巧く乗せられる俺。俺だって、このゴリラ女には頭があがらないのだ。だからと言って、他にこんな色恋沙汰で相談できそうな奴も居ない。
「男ならズパっと言っちゃう。それが一番よ」
「そうも言ってもなァ」
「私そろそろ仕事の準備しなくちゃいけないの」
「もうちょっと待ってくれよ」
「嫌。ネチネチした男は嫌われるわよ」
まったく途切れる事のない毒舌に、俺は退場を余儀なくされた。やはりストレートに行くしかないのか。そうなのか。悶々と頭の中で考えをめぐらせる。ダメだ。こんなんじゃお妙に何言われても文句言えねえかもしれねえが本当に恥ずかしい。恥ずかしがっていること自体がもう恥ずかしい。そうして俺はぐるぐると恥ずかしいのドツボに嵌って行く。顔を赤らめながら道を歩く男はさぞ滑稽だろう。恋愛なんてそんなものだ。どんな恋愛だって滑稽で恥ずかしい。それが当事者には見えてないだけだ。そう、見えてない…。愛しい女の笑顔を見る為、俺は強く一歩を踏み出した。

恋とはサメのようなものだ。常に前進してないと死んでしまう


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