私は、ごくごく普通の女の子だ。決して顔が良かったりスタイルがよかったり頭が良かったり運動ができたりする訳じゃない。ましてやOMCの数年連続王者なんて物凄い人間などでは断じてない。ごく普通のどこにでもいるような勉強を嫌い、運動も嫌い、先輩に憧れ、ドラマに見入る一般的な女子高生だ。ただひとつ特筆すべきことがあるならば、それは私の幼馴染。ひとつ年上のお兄ちゃん的存在についてだろう。
彼は、顔もいいしスタイルもいいし頭脳明晰、運動神経抜群で、日本…いや下手したら世界中で彼のファーストネームを知らない人はいない位の大物男子高校生だ。中学生の頃、その才能が開花して今ではOMCの不動の王者と呼ばれる私の幼馴染の名は、言うまでも無くキングカズマ、その人だ。しかしそれを人に言っても信じてくれる人はいない。OZにおいて全ての情報はアバターの情報として扱われるから、キングカズマのアバターやその名を知っている人が居ても、佳主馬くんの顔を知っている人なんていないのだ。だけど佳主馬くんはそれを差し引いても十二分に学校で目立っている。さっき言ったとおり、佳主馬くんは顔もいいしスタイルもいいし頭もいいし運動もできるのだ。それをほっとく人はいない。
私はずっと、佳主馬くんの斜め下から、佳主馬くんに手を引かれて佳主馬くんを見上げて生きてきたような気がする。純粋に佳主馬くんに憧れて、ずっとあとをついて歩いて、高校も、自分のレベルではキツいのを承知で猛勉強して。ぶっきらぼうな佳主馬くんがそれを拒否しなかったから、私は調子に乗っていた。私の人生の8割は佳主馬くん関連であり、佳主馬くんの人生の1割くらいは私なんじゃないかって自惚れたりしていた。

「…ねえ」
「ん?なあに、佳主馬くん」

高校に入って、佳主馬くんと私はあまり話さなくなった。高校生だし、佳主馬くんにもいろいろあるんだろうなあ、なんて私はぼんやり構えていた。そして今日は、久しぶりに佳主馬くんのほうから話しかけてきてくれたから、今日はいい日だなあなんて。

「そろそろ彼氏でもつくったら?」
「え?」
「もう僕のあとを付いてくるような年じゃないでしょ」

平凡を絵に描いたような私に、特筆すべきことがあるならば、やっぱりそれは自慢の幼馴染のことだろう。彼は私の夢であり希望であり生きる価値のようなものであった。生まれてからずっと、佳主馬くんの背中を追いかけて生きてきた。手を引かれていると思っていたけど、私が一方的に付いていっていただけだったのかもしれない。佳主馬くんの表情を見れば、嫌でもわかる。





こんなさみしい気持ちになるために生まれてきたんじゃないやい




そっか。いままでごめんね、佳主馬くん
謝んないで
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