佐助くんはお母さんみたいだ。私がマフラーをしないで登校すれば「風邪ひいたらどうするの」って言って佐助くんのマフラーを私に巻いてくれるし、私がテストなんかで平均よりいい点数をとったりすると嬉しそうに笑って頭を撫でてくれる。お昼は佐助くんのお弁当だし(パンを買って食べようとすると「栄養バランスが悪いでしょ」なあんて言ってパンを返品してしまうのだ)、本当に私は佐助くんの子どもなんじゃないだろうかと思ってしまう。しかし、こんな私でも一応肩書きは佐助くんのカノジョである。登校は別々で帰りは駅まで一緒。私は物凄く早起きして、いつも先に来ている佐助君よりもずっと先に来た。それでもかすがちゃんやちらほら教室に人が居て、わたしはかすがちゃんの隣の席に座って溜息を吐いた。

「溜息なんて吐いてどうした?幸せが逃げるぞ」
「私…魅力ないのかなあ」

そういうとかすがちゃんが目をまんまるにした。かすがちゃんはいいなあ。背も高くて佐助くんと釣り合ってるし、ボンッキュッボンッのナイスバディだし、頭も良いしスポーツもできるし、先輩からも後悔からも一目置かれていて、学校一の美女と噂されているかすがちゃんだから、そりゃあ羨ましくもなる。このちょっと変わった人が多い学校で、私は平凡を極めたような女子生徒なので、学校有数のイケメンの佐助くんが彼氏なだけでも感謝しないといけないのだ。だけど、もっと恋人っぽいことしたいなあ、なんて。

「我侭かなあ」
「そんなことはないさ。あいつも照れてるんだろう」

照れてる?あのいつも飄々としててたまにちょっぴり意地悪で、すごくかっこよくて成績優秀スポーツ万能であの真田幸村くんを沈められる唯一の存在として名高い佐助くんが?私との日頃の生活に、佐助くんが照れる場面なんてない。

「もうわかんないよ」

私が大きく息を吐くと、かすがちゃんはどこかにメールを送った。誰だろう。「けんしんさま」かな。ケータイをぱちんといい音をたてて閉じたかすがちゃんは満足そうに笑った。やっぱり「けんしんさま」だ。

「もう大丈夫だろう」
「え?」
「猿にお前の悩みを伝えておいた」

猿とはすなわち猿飛佐助の「猿」だろう。かすがちゃん。そりゃあひどいよ。かすがちゃんはすました顔で窓際まで歩いて行って窓を思い切りあけた。びゅうびゅう朝の冷たい風が入ってくる。「ちょ、さむいよ」「まあ待て、もうすぐ来る」するとなんていうことだろう。佐助くんが、あのたまに見せてくれる黒い鳥と一緒に窓のなかに入ってきたのである。華麗に着地をきめる佐助くんに、かすがちゃんは窓を閉めて「私は役目を果したからもう行くぞ」と一言言い、教室を後にした。私が唖然としてかすがちゃんを見送ると、佐助くんが私のほっぺを両手で包んで無理やり佐助君の方に向かせて、至近距離でこう言った。

たとえ君が何になれなくてもずっと隣にいるし頭を撫でたいと思うよ


そう言った佐助くんの顔はちょっぴり赤い。照れてる佐助くんはとても可愛い!なぜか私の母性本能が刺激され、佐助くんを抱きしめた。ちょっとだけいつものお母さんっぽい佐助くんのきもちが解ったきがした。

「佐助くんかわいい!」
「ちょ、やめ…胸…」
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