私は近所の公立、佳主馬は東京のけっこう頭のいい私立に行くらしい。佳主馬はけっこう頭がいい。だからきっとその私立の高校にも受かるんだろう。名古屋と東京。涙がでそうだ。だけど佳主馬に迷惑はかけられない。私の家には、高いお金を払って東京まで出て行くようなお金はない。さしずめ遠距離恋愛。私の心は爆発しそうだ。
佳主馬みたいな、顔が良くてちょっと可愛いクールさを持っていて出しゃばる訳でもないのに皆をまとめてしまう力を持っているような人が、東京でもモテない訳がない。今私たちが通っている中学校でもかなり人気だった佳主馬が、今私と付き合ってくれているだけで奇跡に等しいんだ。東京なんかに行ったら、私よりももっと器量が良くて顔が可愛くて佳主馬に釣り合ってる女の子なんて溢れかえるほどいるに決まってる。しかも高校生なんて。私にはなぜか高校生はふしだらというイメージがあった。

「…ねえ」
「ん」

さらりと流れる髪を触りながら私の方を向く佳主馬を見るだけで、私の心臓はきゅーっと収縮してしまう。

「…どうしたの」
「時間が、止まればいいのにな、って」

私、こんなに佳主馬のこと好きなんだな。涙が出そうだった。でも我慢できる。大丈夫、私は強い。

「そんなこと、」
「うん、ごめんね」

迷惑をかけないって決めたのに。頭のなかがぐちゃぐちゃでうまく考えられない。佳主馬が私の手を握った。その感覚が妙にリアルで、やけにゆっくり感じられる。佳主馬のパソコンが複数台ならべられている整頓された部屋。座っているクッションの感覚。全部妙にリアルだ。

「…僕さ」
「うん」
「高校の第一志望、変えようと思うんだ」

リアルすぎる夢って、たまに見るよね。私は目を見開いて、佳主馬を見た。佳主馬の諭すような目が、今の私にはちくちく刺さってくるように痛い。

「どうせ高校卒業後、東京に行くんだしさ」
「……うん?」
「今じゃなくてもいいような気がする」
「そんな、」

じゃあまさか。いや、でも。佳主馬の目は、さっきと変わらない。少し寒い位だった部屋の温度が急に上がったんじゃないと思うほど私の体は高揚していた。

「一緒の高校に行こう」

佳主馬の、ひやりとつめたい手に、きゅっと力が入った。なんだ、なんなんだ、これ。

「…いいの?」

言いながらも、きっと私の目は歓喜に染まっていたに違いない。「だから、さ。」「うん」

「そんな顔しないでよ」


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