忍びだと言うのに俺は浮かれていた。ついこの間、好きで好きで好きな女とめおとになったのだ。誰だって否応なく浮かれるに決まってる。朝起きれば隣に愛くるしい寝顔と温もりがあり、夜床に就く時には恥ずかしそうに微笑みながら愛する女が俺の布団に入ってくる。こんな幸せが俺なんかにあっても良いのだろうか。そう思ってしまうほど。大将には「あの佐助が変わったものよ」とからかわられ、旦那にはつい最近まで顔を合わすたびに「破廉恥」と罵られていた。しかし大将の顔はとても嬉しそうなものだったし、旦那が言う「破廉恥」は何故か俺を喜ばせる要素を含んでいた。今日だって俺は浮き足立って任務に向かったんだ。「早く帰ってきて下さいね」そう言われたから張り切ってたはずだった。だけど
「俺様ピーンチ」
あんまりにも好きで好きで好きな女を想いすぎて敵の気配に気づけなかったのだ。ぐるりと四方を囲む大量の敵。助かる確率は限りなくゼロに近いイチ。さてここからどう動くか。諦めるなんて選択肢は今の俺には毛の先ほども見えない選択肢だった。

だっておまえが泣くかもしれない

早く帰って顔が見たい。それだけだ。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -