約二十年前、先生と会う

そして連れて来られた寺子屋で高杉とヅラとお前に出会う
お前は嬉しくても哀しくても無理して笑うような奴だった

 約十数年前、先生が殺される

俺達はひとりぼっちだ。それでもお前は無理して笑ってた
見ているこっちが辛くて辛くて顔見たくなくて抱きしめた
ぐももった声でまだ笑ってたけど俺の服が涙で濡れていた

 約十年前、戦争の只中に居る

女のお前も刀を振るってた。俺たちと同じくらい強かった
いつも男のふりしてるお前がたまにすごく女っぽく見えた

 約数年前、戦争が終る

お前は俺についてきた。それが凄くすごく嬉しかったんだ
新しい生活が始まってお前と一緒ならなんだって良かった
この頃お前はよく咳をするようになった。だけど笑ってた

 約一年前、お前が死んだ

病気だったらしい。過度のストレスなんかが原因らしい。
なんにも知らなかった傷ついた。お前の死に顔は笑ってた

お前は嬉しくても悲しくても笑うようなへんな奴だった。
知っていたはずだった。でも気づかなかった。どうして?
そんなの俺が一番よく解ってる。見てみぬフリをしていた

 つい一週間前

お前の遺品の中から、黄ばんで薄汚れた封筒が出てきた。
どうして今更こんなものを見なければならないのだろうか
封筒には滲んだ文字で「いしょ」と書かれている。いやだ

俺は、お前の死をひたすら否定していた。もし、もしも、
これを読んだら俺はお前の死を受け入れなければならない
そんなの絶対に嫌だった。ゴミ箱に封筒を投げた。だけど
封筒はゴミ箱には入らなかった。俺に読めと言ってる様だ
目から勝手に涙が出てきた。滲んだ文字を見た。泣いてた

お前もすごく辛かったよな、気づけなくてごめん。いや、
気づかないフリしててごめんな。だって、お前が笑うから
…言い訳はもうたくさんだ。俺は自分が自分で憎い。嗚、

今なら自ら命を絶つ者の気持ちが手に取るように解るんだ

 昨日

俺は監禁されていた。部屋から出れない。どうして、何で
部屋には抜けた俺の髪と一枚の薄汚れた封筒。訳解んねえ
イライラして髪を掻く。ぱらぱらと落ちていく俺の銀の髪
お前さ俺のこの髪を好きと言ってくれたよな。嬉しかった
しかしその髪はもう水分を失って薄気味悪く畳に落ちてる
今の俺、お前が見たらなんて言うんだろうな。嫌い、とか

 一時間前

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌わないでくれお願いだ俺はお前に嫌われたくなんかない
俺はお前が好きだよ愛してるって言ってもいい位なんだ。
半狂乱になる俺の目に、あの封筒が映った。どうして、今

 一分前

俺は長い葛藤の末、封筒を手に取った。触るだけで涙が、
だけど読まなきゃダメだ。まるで操られたように動くんだ
封筒の中にはこれまた黄ばんだ髪が一枚。書かれた文字は

 一秒前

はっとなり前を見た。するとそこには透けた足が見えた。
更に上を見ると懐かしくて愛おしくて狂おしい顔があった
一年振りの再会、否、この笑顔をみるのは何時以来なんだ
今の俺なら解るよ、気づかないフリもしない。そうだよな
お前はそんなに辛いんだよな。俺のこんな姿を見るのも、


前を向いて

触れない体に涙が溢れてももう俺は泣いたりしなかった。
ただただ愛しいお前を離したりなんてしたくなかったけど
お前は自ら俺から離れて、口をぱくぱく動かした。そして


 今の俺

今の俺は…
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