びゅうびゅうと風が吹く屋上にひとりぽつんと立っていると、やっと錆びかけた扉が鈍い音を立てて開いた。イケメンは強風に吹かれてもイケメンらしい。

「し、晋助くん」
「あ?」
「何のようですか」

敬語になってしまっているのはわたしが晋助くんにびびっているからとかそういう訳ではない。断じてない。絶対ない。ない…うん、違う…多分。わたしが勝手にプチ混乱をおこしていると、知らぬ間に晋助くんがわたしのすぐ近くまで来ていた。びっくりしてうしろに飛びのこうとすると、がしりと案外しっかりした晋助くんの手に肩をつかまれた。

「しんすけくん…?」
「……」

痛い。腕もそうだけどなにより沈黙が物凄く痛い!!そして顔が近い!晋助くん何にも言わないし、微妙に開いた口から晋助くんの吐息が…ってわたし変態みたいじゃん、この場合変態はわたしじゃなくて晋助くんのほうでしょ…晋助くんがか私のかさついた唇とぺろりと舐めた。なめた、なめ…

「き、」
「あァ?」

「キャー変態」

晋助くんはぼけっとわたしを見たあと、肩を掴んでいた手を離してうずくまり、笑い出した。混乱していたわたしはなにがなんだかわからなくて、とりあえず晋助くんの頭をグーで叩いた。

「ばか」
「悪ィ」

晋助くんはひとしきり笑ったあと(ひどい)、スッと立ち上がってわたしに手をさしのべた。「銀八んところ行ってケータイ返してもらうぞ」「…放課後でしょ?」「もう一件未読メールがあんだよ」そういってむりやりわたしの手を握って晋助くんは歩き出した。


「なんであのようなことをしたんですか」
「…わからねェか?」
「わかりません」

晋助くんが溜息を吐いた。むかつく。

「俺はおまえを気に入ってんだよ、それ以上いうことはねえ」

あ、今ちょっときゅんってした。きゅんって


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