わたしは隣の席の晋助くんに何故か気に入られているようだ。晋助くんと言えばこの学校で最も過激で最も危険な男と評されるようなすごい人だ。どうして別に目立ってもいなくて可愛いわけでもないようなわたしを…。晋助くんが教室にいるときわたしはいつもそのことを考えている。前回の席替えの時から晋助くんは前にくらべてよく教室に来るようになった。まあ、来ても授業なんてものに興味はないみたいで、机に足を乗せて無表情でぼーっとしてる。一番後ろの窓側の席にすわっている晋助くんのこのアホ面を見ることができるのはわたししか居なくて、なんだか嬉しくてちょっと笑ってしまった。

「なに笑ってんだ」
「あ、いや、」

ごめんね、と先生にばれないように囁くと晋助くんは、わたしをゆるく睨んだあと、ふんと気にくわなそうに視線を戻した。わたしも黒板に視線を戻すと、なんだかかなり進んでしまっていて、慌ててシャーペンを握ると、こんどはケータイが震えた。あとで見れば、と思いつつもなんだか気になってしまってこっそりケータイを覗くと晋助くんからメールが来ていた。不審に思って内容を見ると「昼休み 屋上」と簡素な文章とも言えないような単語が綴られていた。晋助くんをちらりと睨むと、こっちを見てニヤついていた。む、むかつく!

「授業中にケータイいじるって、ったく、近頃の女子高生はよォ…」
「え!?」

ケータイを握り締めたまま晋助くんを睨み続けていると、すぐ後ろからめんどくさそうな声がした。びっくりして振り返るとまっしろで、上を見ると銀ちゃんがわたしのケータイを持ってにやりと笑っていた。「放課後、取りに来い」

晋助くんのバカァ!