その日はとても暑かったのにあたしはぶるりと身震いをした。突っ立ったまんまの足の先に力が入って白くなって、指先が冷える。ぐわんぐわんと頭の中で鐘を鳴らしたかのように揺れた音が響いて思考がうまくまわらない。体の力が抜けて足元が覚束なくなってあたしはようやく理一さんの隣に座り込んだ。寒い、のに汗が止まらない。風邪をひいて具合が悪い時みたいだ。佳主馬から視線を外すことができない。涙を吸い込んで色が変わっている畳に揺れる影、ゆらゆらと震えている。泣いてる。皆が悲痛な顔をして佳主馬を見てる。なんでなんでどうして、佳主馬は、なんにも悪いことしてないのに。「…大丈夫?」「り、いちさん」あたしの異常に気づいたらしい理一さんがこっちを覗き込んで、緊迫した空気が少し和らいだ。だけどあたしののどからは自分が思っていた以上に弱々しい声しか出なくて、あたしの声にハッとこっちを向いた佳主馬の目が赤かったとか、潤っていたとかで。頭のなかぐちゃぐちゃで、気持ち悪い。心配した理一さんに背中を擦られて、吐きそうになった。

「まだ、負けてない」

弱々しく線が安定しない空気の中で、ひとつだけ真っ直ぐな声が挙がった。みんなの視線の先には健二さんが居て、健二さんのまぶしさに、あたしの存在が小さくなっていく気がした。



I want to live though the end is not seen.

(終わりの見えない生き方をしたい)
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