音のない雑木林に絞め殺すようなため息が漏れた。しかしそれは本当に僅かな音でしかなく直に林の木々に掻き消された。首にぬるりとした感触が伝わる。生ぬるくて、鉄臭くて、本当にこの匂いは大嫌い。自分のものとなれば尚更、それは悪臭を放つ。
動脈の直そばに宛がわれているクナイからその血は流れていた。そのクナイを持った人がこちらに冷ややかな視線を送っているのが、暗がりの中でも痛いほど良く解った。私は今、責め立てられている。

「ねえ、早く決めて欲しいんだけどさあ」

軟らかい口調には似合わないほど殺気に満ちた手。じわり、と汗が滲む。あたしはただ肯定の意を示せばいいんだ。そうしたらこんな肺の潰れるような空間から開放されて、いつもどおりの佐助と一緒に、

「そんなに竜の旦那が好き?」
「…っ」

違う、あたしが好きなのは佐助なんだよ。お願い、気づいて。もしも佐助が気づいてくれたら、あたしは伊達なんか気にすることなく、真田さまと団子を食べたり、佐助と昼寝したり…
わかってる、所詮夢なんだって、分かってる。解ってる…けど、

「…ごめ、ん」

やっとのことで搾り出した声は弱く震えていて今にも消えそうだ。恥ずかしい、自分で決めたことなのに。走ってその場を離れた、佐助に忍びの技を教えてもらっていてよかった。なみだが出るけど、理由はわからない

幸福逃避

10100615

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