たくさん人を斬ってたくさんの刀傷をつくってたくさん泪を流してたくさん液体を浴びてたくさん奪われてたくさん奪った。そんなあたしに笑う資格は無いのかもしれない。でも笑っていないとおかしくなってしまいそうで、笑っていないとあいつが不安そうな顔をして、笑っていないと自分が保てなくて、それがもう自分がおかしくなっている証拠で、あの人に約束をして戦って強くなっていくと決意したにもかかわらずあたしはやっぱり弱くて、なにが正解で何が間違いで何が正義で何が悪なのかもよくわからなくなってしまった。今はもうただ我武者羅に刃を振るうだけ、眼前を過ぎていく肉塊をやり過ごして遠くにある白を追いかけていく日々。いつでもあいつはへらりと平気そうに笑って、それでも不安そうに眉根を寄せて眠るから、あたしは時々勘違いをしてしまう。あいつは弱いんじゃないかと、もしかしたらあたしよりもあいつの方が弱くてあたしよりあいつの方が人を斬って刀傷をつくってたくさん泪を流してたくさんの液体を浴びてたくさん奪われてたくさん奪ったあいつ方が、あたしよりも笑ってないとおかしくなってしまいそうで笑ってないと不安で笑ってないと自分を見失ってしまいそうで、そんな自分が嫌いなのかもしれない。あいつが一番、あいつを嫌いなのかもしれない。

「たすけてくれ」

小さく小さく本当に聞えるか聞えないかの小ささで溜息を吐くようにぽつりと呟いた声はしっかりとあたしの耳に届ききちんと鼓膜を震わしてあたしの脳内に信号として送られた。その小さな呟きにあたしの脳は信じられないほど混乱して脚ががくがく震えて目は焦点を合わせられずうろたえているのが自分でも良く解った。あいつはそんなあたしを見て傷ついたように笑って、あたしはその場に座り込んだ。動揺しすぎて泪が出てくる。薄暗い隠れ家にあたしとあいつの二人だけ、皆はもうどこに居るのかわからない。大きく広げられた両腕に、躊躇い無く飛び込むことができた

アイデンティティの行方を探してに飛び込んだ




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