正直に言えば、その時僕はちょっとイラついていた。幼馴染が僕に隠し事してるなんて始めてのことでどうすればいいかよくわかんなかったし、隠し事をするその根性が気に入らない。

「僕には言えないようなこと?」

「え?え〜、うん」

僕からの視線を避けきれない顔が逸らされる。僕はその顔を両手で掴んで無理やりこっちに向かせた。僕らの距離が妙に近いことに前の席の母さんは気づいていない。生憎だけど、自分の気持ちを自覚した僕は妥協するつもりなんてないから。

「か、ちか…!」

「え?」

顔を真っ赤にして視線だけでも僕から逸らそうとする仕草は、脈があるとしか思えない。僕は、期待してもいいのだろうか?それなら、初恋は実らないなんて言うけど、僕がそれを撤回してみせようか。

「ねえ、」

「はっはい」

「あんたのこと好きだよ」


ずるいったらないね


まさか、両想いだとはこれっぽちも考えていなかった。はじめは冗談なんじゃないかとか思ったけど、佳主馬はこんな冗談言うような性格じゃないしなにより、佳主馬のまっすぐな視線がその思考をすぐに打ち砕いた。ふわり、と陣内家のシャンプーの香りがする。それは佳主馬があたしにだんだん近づいてきているという事を意味していて、佳主馬の長い前髪があたしの頬に触れてくすぐったい。春の日差しのようだった柔らかい気持ちも、ここまでくれば灼熱の極夏のような勢いと危うさを孕む。こんな心臓に悪い思いはできればもうしたくない。あたしは佳主馬を落ち着かせるためにとりあえず深呼吸をした。

「ねえ、」

「ま、まって!佳主馬、危ないから、座って」

体内に酸素を取り入れたおかげでいくらか落ち着いた頭でゆっくり佳主馬を宥める。佳主馬は不満そうだが、とりあえず自分の席に戻ってくれた。ちらりと前の方に目をやると新幹線の前の席に座る聖美さんは酷く楽しそうに笑っている。恥ずかしくて死んでしまえそうなのを何とか堪えて佳主馬を見る。腕を押さえつけて佳主馬を座らせているあたしは、ぎこちなくその手を離した。するとすぐに佳主馬に手をとられる。

「ちょ、」

「ねえ、好きだよ」

「さっき聞いた、」

「僕のこと好き?」

きょるんとした瞳は確信犯であることを隠すつもりはないらしい。佳主馬に搾られた心が今にもあふれ出しそうで、でも食い止めることはきっと無理なんだろう
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