坂田のちょっと病んでて不健全な感じ


おまえが、泣いた。わんわんと喚くように泣くのではなくて、ただ目から水を流すように静かに、だけど印象的に。俺はただ、おまえに笑ってほしかったのに。

「ひどいよ」

あいつは言った。確かに、酷いと発音した。酷い?俺が?まさか、そんな訳あるはずねえ。だって俺はあいつを愛していて、俺はその気持ちを言葉や行動に表しただけ。だから、酷い訳がない。なあ、そうだろ?そうだって言ってくれよ。大串君とかと話す時みたいなさあ、まっしろでふんわりした、幸せそうな笑顔でさあ。そういえば、なんで俺には笑いかけてくれない訳?さすがの俺でも嫉妬しちゃうよ?男なんてみんなそんなもんだって。

「銀、ちゃん」

なあ、おまえならわかってくれるだろ?先生が居なくなる前からおまえはずっと俺に懐いていて、俺と一緒にいたんだから、わかってくれるだろ?なあ、俺は、おまえを、愛してるんだ。冷たい床に座り込むおまえを俺は見てる。哀しそうに伏せられた睫だって愛おしい。俺はおまえの全部を愛してるんだ。伏せられていた水分を含んだ艶っぽい瞳が、俺を見た。おまえのその愛しい瞳に、俺が映ってる。ぎこちなく笑うおまえも最高に愛しいよ。それにしても、おまえのでっけえ瞳に映る俺は酷く疲れてるみたいだ。着流しは肩にぶらさがってるだけだし、目は死んだ魚みたいだ。目の下にはくまもある。俺、ちょっと痩せた?そんな筈ない。おまえが万事屋に居ない時にちゃんといちご牛乳飲んでるし、昼寝もしてるってのに。おかしいなあ、だって、俺は、こんなにも、おまえを

「銀ちゃん」

おまえの愛しくて細い足がゆっくりと立ち上がる。そして俺の愛しい愛しい声帯が俺の名前を発音した。そしてそのまま俺の愛しい愛しい愛しい腕が俺を抱きしめる。その腕に力はあまり入ってなくて、俺を絡めとるように回されている。俺も愛しい愛しい愛しいいとしいおまえに腕を絡める。まるで愛し合う恋人同士みたいだ。俺はおまえを愛してる。なあ、おまえは俺を愛してる?

「ぎんちゃん、もう、さみしくないんだよ」




It is not possible to return until the past. However, I wanted to love you.
(However, I knew no love. )


過去には戻れない。だけどね僕は君を愛したかったんだ。

(けれど、僕は愛を全く知らなかった。)

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